東日本大震災の発生から11日で5年。復興格差は、街づくりや企業再建などの「モノの復興」だけなく、目には見えない「心の復興」にも表れている。

 震災発生当初、被災者に広範に見られたのは「生存者罪悪感」(サバイバーズ・ギルト)と呼ばれる自責の感情だった。

 義理の母親と一緒に津波にのまれ、つかんでいた手が離れて自分だけが助かった女性がいる。

 宮城県南三陸町に勤めていた男性は津波に流されていく妻を防災対策庁舎の屋上からただ見ているしかなかった。妻の遺骨はまだ墓に入れていない。「一人きりはかわいそう。同じ家にいるだけでいいんだ」

 携帯電話はつながらないけれども、行方不明の息子に今もメールを送り続ける父親がいる。「待ってるからね」

 潜水士の資格を取得し、海に潜って行方不明の妻を捜し続ける男性もいる。

 「日常生活を早く取り戻したい」という被災者の思いは切実だが、時間が心の傷をいやすのではなく、逆に時間がたつにつれて生活再建の展望が持てなくなり生きがいを喪失するケースも少なくない。

 長引く仮設住宅での暮らしは、心身に影響を及ぼす。夫婦同居ならまだしも仮設住宅での高齢者の独り暮らしは、いいようのない孤独感にさいなまれる。仮設住宅を出て災害公営住宅に移るのにも不安が伴う。

 生きる力と生きていることの喜びを取り戻すためには「支え合い」が欠かせない。

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 震災は子どもたちの生活をずたずたに引き裂いた。岩手、宮城、福島の3県から県外の学校に移った子どもは昨年5月の段階でも1万人を超える。そのうちの8割あまりは、原発事故の起きた福島の子どもたちだ。

 家族を失った子どもは、その話題を避けたがる傾向があるという。心の中にしまい込んだ悲しみや怒りをどのように受け止め、心身の回復を図っていくか。

 子どもから被災の状況を聞き出すのは「被災時のつらさや悲しさをもう一度体験させるのと同じ」で避けるべき、だと村上佳津美・近畿大准教授は指摘する。

 原発事故で全町避難が続く福島県双葉中は11日、移転先のいわき市で卒業式を開いた。卒業生の荒木和人さん(15)は「将来は双葉町のためになる人間になりたい」と前向きだ。成長過程にある子どもたちの回復力が意気消沈する大人たちを元気づける。

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 震災から5年たって新たな課題も浮かび上がってきた。 復興業務の最前線に立つ自治体職員や応援職員らの疲労が目立ち、心を病む職員が後を絶たない。

 2014年4月には、岩手県山田町で、親族を失いながら農地復旧にあたっていた50代の男性職員が、仕事への悩みをつづり、役場から飛び降り自殺した。

 震災からの復興は、まだ道半ばである。原発被害に関してはあまりにも問題が多く、被災者は道半ばとさえいえない状況に置かれている。