世界の珍しい植物を追い求める“プラントハンター”であり、「そら植物園」代表の西畠清順さんの講演会が2月26日、沖縄県浦添市のホームセンター・メイクマン浦添本店であった。清順さんは自身の体験をもとに植物の力について語った。満席の150人が熱心に聞き入った。

プラントハンターとして活躍する西畠清順さん(写真:そら植物園提供)

桜を紹介する清順さん=2月26日、沖縄県浦添市のホームセンター「メイクマン浦添本店」

熱心に講演を聞く参加者

プラントハンターとして世界各地を訪問(写真:そら植物園提供)

清順さんの著書

アデニウムの話をする清順さん

講演後のサイン会では長い列ができた

プラントハンターとして活躍する西畠清順さん(写真:そら植物園提供)
桜を紹介する清順さん=2月26日、沖縄県浦添市のホームセンター「メイクマン浦添本店」 熱心に講演を聞く参加者
プラントハンターとして世界各地を訪問(写真:そら植物園提供) 清順さんの著書
アデニウムの話をする清順さん 講演後のサイン会では長い列ができた

■植物を活かす方法

 植物を活かすという方法を使って、世の中に対して何ができるのか、少しだけ紹介します。

 まずはイベント、空間プロジェクトです。

 国際眼科学会という東京国際フォーラムで行われた大規模な学会で、世界各地から集まるVIPを巨大な満開の桜でおもてなししたいという依頼を受けました。

 オープニングの日に超巨大な桜を満開にさせないといけないミッションです。「清順さん、その日に咲かないと責任取ってもらいます」なんて言われて(笑)。でも、無事に成功しました。

 この時、世界134カ国からVIPが集まったのですが、みなさん、「素敵なおもてなしだね」「いい思い出ができた」と言いながら、桜の写真を撮っていました。

■植物とアート・デザイン

 百貨店も僕のクライアントです。 高島屋の店内を植物園にしました。百貨店ですから、植物を飾るのは当たり前ですが、「百貨店全体を植物園に」という概念から提案しました。

 高島屋の日本橋店は歴史的建造物になっています。逆にそれが面白いなぁと思い、植物だらけにしました。売り場全てを植物がジャックするというイメージです。こんなに面白いことはないですよね。これが話題となり、週刊誌にも取り上げられ、百貨店の売り上げが億単位で上がったと聞いています。

 TOKYO DESIGNERS WEEKというデザイナーのイベントで、僕は巨大なシンボルツリーを担当しました。これを手掛けたら、様々なメディア関係者やクリエーターから「すごいですね」と言われました。「植物ですよ、当然じゃないですか」と僕は思うのです。

 だって、デザインの歴史はどれぐらいでしょうか。石器や壁画をデザインとしてとらえたとしても、数万年から数十万年ぐらいでしょうか。でも植物の歴史はけた違いです。植物がシンボルになるのも当たり前じゃないですか(笑)。

 そもそも、植物の歴史はいつから始まったのかご存知ですか。もし子どもに「植物はいつどこからやってきたの?」と聞かれたら、どう答えますか?

 そうです、5億年前です。当たりです。4億年~5億年前と言われています。

 それでは、どこから来たのか分かりますか? そう、海で発生して川を経て陸地にやってきたのです。5億年の植物の歴史と1万年のアート・デザインの歴史、比べ物にならないですよね。人間のクリエーション(創造)の歴史なんて、自然の歴史に比べたら、毛先ぐらいの長さしかないのです。

■植物を通してメッセージ

 ルイ・ヴィトンのイベントで、蜷川実花さんが江戸のお花見というコンセプトでプロデュースして、僕が桜を咲かせて、その下で歌舞伎の尾上松也くんが舞う。一夜限りのパーティーもやりました。

 それから、世界中の大使が集まったパーティーで、その会場を植物で彩る仕事もしました。各国の大使が、それぞれの母国を感じられるように演出しました。ジャマイカの大使はバナナを見て喜び、アフリカの大使はバオバブを見てはしゃぎ、オーストラリアの大使はユーカリを見て驚きました。

 僕は30歳になるまで、ルイ・ヴィトンのことをルイス・ヴィトンと呼ぶくらい何も知りませんでした。それが今では、いろいろな企業とコラボして植物を取り入れることで世の中を豊かにすることができるか、考えるようになりました。

 北陸新幹線開通に合わせて桜を咲かせたり、長崎のハウステンボスでイベントをしたり、赤坂サカスで子どもたちの公園を造ったり、活動はさまざまです。

 植物を通してメッセージを伝える。それを見て喜んでもらう。それが、そら植物園のテーマ「ひとの心に植物を植える」ことなのです。

■日本は一つ 桜で表現

 震災1年後に復興支援で、全国47都道府県から桜を集めて、それを一気に咲かせるというプロジェクトを手掛けました。このプロジェクトでは沖縄の方にもお世話になり、緋寒桜を用意してもらいました。北は北海道から南は沖縄まで、その地域の桜の枝を集めて、「日本はひとつ」というメッセージを表現するために、1個の大きな植木鉢で咲かせました。

 僕は無我夢中で桜の枝を求めて日本中を旅しました。そのうち、広島市植物公園の「被爆桜」や世界遺産である銀閣寺の山桜、長崎県大村市からは門外不出の桜と言われた「オオムラザクラ」を提供していただきました。被災地では、津波に耐えた桜の枝を集めてもらい、日本中から桜が集まってきました。

 それを一気に咲かせたのがこの桜です。東日本大震災から1年がたち「桜を見上げよう」と、希望を込めたプロジェクトでした。

 これは「そら植物園」第1弾のプロジェクトでした。予算は1500万から2000万円程度でしょうか。様々なメディアに取り上げていただきました。広告代理店が計算すると4億円の広告効果があると言われました。

 このプロジェクトはルミネ(JR東日本子会社)がクライアントだったのですが、キャンペーンとしては大成功でした。「こんな感動的な桜が咲きました」とニュースに取り上げられることで、ルミネが注目されるわけです。会場には小泉純一郎元首相をはじめ多くの人が訪れました。

■植物に投資する効果

 僕はお金の話をすることは下世話なことだとは思っていません。

 僕が植物の大切さを情熱的に語っても、企業は「そうですね」としか言いません。

 大切なのは植物に投資することで何が得られるのか、きちんと伝えることです。企業は「何千万円の予算をかけて、何が返ってくるの」と聞いていきます。そうでないと予算は出ないのです。

 情に訴えるだけでは世の中は緑で埋まらない。僕は20代の頃から、そう感じていました。だから「植物に投資したら、もうかりますよ」と言うようにしています。もうかるし、注目されるし、尊敬される。そう言わな、あかんと思っています。

 そのためには事例をつくることが大切なのです。

■植物を使い売り上げアップ

 九州のホームセンターから植物を使ったプロモーションの依頼を受けました。そこで僕が提案したのは植物の迷路です。

 何をやったらニュースになるのか考えました。そして、エアープランツで植物の迷路をつくりました。「迷路をくぐらないと植物は買えません」というキャンペーンを展開したら、話題になって、来店率が16%アップ、売り上げが1カ月間で6%アップしたのです。

 このホームセンターの規模からすると10億円以上の売り上げ増です。1000万円の植物への投資が10億円になって返ってきました。極端なことをいうと100倍です。

 「植物で人が呼べるの?」と言う人もいます。いや、「植物なめんじゃねぇ」です(笑)。

 企業のプロモーションといえばタレントを使うのが一般的です。そうではなくて、感動的な桜が咲いたとか、植物の迷路ができたとか、そういう話題をつくり、ニュースになり、結果的に植物に投資した会社がもうかる。そんな世の中になったら、もっと緑が増えるとは思いませんか?

 植物の話は、なんぼでも美談にすることができます。そうではなくてリアルな話こそ大切だと思います。

 先ほど話をした代々木VILLAGEができて4年で、雑誌の植物特集が爆発的に増えました。また、東京では植物をテーマにした商業施設も増えています。代々木VILLAGEという先行事例を見て「植物はもうかるし、注目を集められる」と実感し、「植物に投資しよう」「木や花をたくさん植えよう」という流れが生まれているのです。

■植物で新しい街をつくる

 東京のパークシティ大崎の大規模市街地再開発のプロジェクトにも関わりました。新しい街を丸ごとガーデンシティにするという構想で、すべての公園、街路樹をプロデュースさせていただきました。

 植物との新しい暮らし方をコンセプトに、公園ごとにいろいろなテーマがあり、例えば「食べられる森」では、すべて実がなる樹木が植えられています。桜やオアシスなどテーマはさまざまです。

 ここでは街路樹という概念を根本から見直しました。「○○並木」など、普通は同じ木が植えられていますが、一本一本違う木の方が面白いのではないかと思いました。その方がより有機的で、ガーデンらしく、自然らしいと考えたのです。都内最大のプロジェクトで、いい実験をさせてもらったと思っています。

 また地元(兵庫県川西市)では、街に里山を再現するプロジェクトをやっています。まちづくり大使に任命されて、里山のホタルや木々、日本在来の植物を存分に使って、いま工事中です。

 また、NHKと一緒に「動く植物図鑑」を開発したり、執筆活動したりしています。

 いろいろな角度から植物と向き合い、「多くのひとの心に植物を植える」という目標に向かって活動しています。

■バオバブの木

 最後にバオバブの巨木の話をさせてください。

 先週まで滞在したアフリカで、バオバブの木に登りました。10メートルぐらいあるのではないでしょうか。ビルの4階ぐらいですから、落ちたら死ぬじゃないですか(笑)。怖いなと思いながら登りました。

 案内役のアフリカ人が言いました。

 「子どもたちが木に登って若芽を切って家畜に与えているんだよ」。

 バオバブの新芽はやわらかいですからね。

 そんなに高い所まで子どもたちは登るのかとびっくりしました。そして、子どもでも登れるのなら、と僕も登ったわけです。

 怖かったけど、すでに誰かが登った道だから僕もできました。でも、そうでなかったら、登っていたかどうか、分かりません。

 誰もが歩いたことのない道を行くのは大変だし、勇気が必要だし、理解してもらえない可能性もあります。でも、その場所に立った時に見える景色は、どれだけ素晴らしいことでしょう。そういうことも、植物から教えてもらったような気がします。

 きょうは、僕がこれまで植物に教えてもらったことをお伝えしました。本にいっぱい書いているので、続きは徳間書店から出版された本(「教えてくれたのは、植物でした: 人生を花やかにするヒント」)を買って読んでいただけると幸いです(笑)。長い時間でしたが、ありがとうございました。

【会場から質問】

 【Q】沖縄にはガジュマルの木にキジムナー(木の妖精)がいるといわれています。清順さんも、木から何か感じたりすることはありますか?

 20代の頃、1日の半分以上を木の上で過ごす仕事をしていました。そうしていると、登っている時に目で見なくても枝の位置が分かるようになり、木と一体化したと感じる瞬間がありました。

 ロマンチックな言い方をすると、いつも植物に片想いの状態ですが、たまに両想いに感じる瞬間があります。

 【Q】バオバブの実はおいしくて、レモンスカッシュの味がすると聞いたのですが、食べたことはありますか?

 バオバブの実は食べまくってきました。むちゃくちゃ、おいしいですよ。びっくりするぐらい。実は固くて毛が生えています。固い殻をパカッと割ると、中から発泡スチロールみたいな、白い繊維のような果肉が出てきます。それを食べると、口の中はもうレモンスカッシュ!(笑)。バオバブの話をすると明日の朝までしゃべりたくなるので、これくらいにします。(笑)

 【Q】これまで学びになった植物があったら教えてください。

 コピーライターの糸井重里さん、染織家の志村ふくみさんと、懇意にさせてもらっています。志村さんは草木染めで植物の中から色を取り出すプロで、僕は植物を扱うプロです。

 ある日、志村さんの娘さんから「平和の色が見てみたい」という話を聞いたのです。平和の色って何でしょうか。

 僕は中東が好きで何回も行っていますが、2011年の「アラブの春」の瞬間も僕は中東にいたのです。情勢が緊迫していて、マシンガン付きのトラックや銃を手にした兵士を乗せた車が行き交う中を、僕は植物を探していました。

 その時に見たのが「砂漠のバラ」という名前のアデニウムだったのです。

 みなさんは砂漠に行ったことありますか? 中東の砂漠はものすごく悲しい色をしています。色がないのです。乾いた土の色、乾いた岩の色、乾いた色ばかりで、緑いっぱいの沖縄とは逆の世界です。その中で「砂漠のバラ」と呼ばれる花が咲いている。ものすごくきれいだと思ったのです。

 こんな仕事をしていますから、多くの花を見ていますが、一輪の花にこんなに感動するものなのかと思ったのです。

 「きれいですね」言ったら、現地のガイドは「そうかな?」。そこに住む人たちからすると、それが当たり前なのです。

 一輪の花に感動できる自分はどれだけ恵まれていることか。平和が当たり前の世界とそうでない世界があることを実感させてくれた花です。

 平和の色の話を聞いた時、そんなことを思い出しました。それで志村さんに、僕が中東で出会って感動した「砂漠のバラ」を送りました。そして染めてもらったのです。

 ある日、スカーフが届きました。すごくきれいな黄緑色でした。ゾクッとするような色です。箱を開けた時、涙が出るかと思うぐらいでした。紛争の絶えない中東に自生する植物ですが、こんなに平和の色が出せるのかと感動しました。それが「砂漠のバラ」が教えてくれたことでした。(了)

 【プロフィル】西畠清順さん(にしはた・せいじゅん) プラントハンター、そら植物園代表。1980年生まれ。幕末から150年続く花と植木の卸問屋「株式会社 花宇」(兵庫県川西市)の5代目。 日本全国、世界数十カ国を旅して収集、生産している植物は数千種類。日々集める植物素材で、いけばなやフラワーデザイン、室内緑化、ランドスケープなど国内はもとより海外からのプロジェクトも含め年間2000件を超える案件に応えている。2012年1月、ひとの心に植物を植える活動として“そら植物園”をスタート。 さまざまな個人や企業、団体と植物を使ったプロジェクトを多数進行中。