専業主婦だったカオリ(37)はおととしの8月、自衛官の夫と離婚し、当時中学生から4歳だった4人の子どもを引き取った。

子どもたちと家計簿を見るカオリ。専業主婦時代から、ひとり親になった今も、お金の出し入れはしっかり記録している

 離婚の際、夫の求めで「養育費を請求しない」という文書にサインしたが、その後、養育費請求の調停を家庭裁判所に申し立てた。調停が成立して、昨年3月から、子ども1人に1万3千円、合計5万2千円の養育費が毎月支払われている。

 離婚直後、すぐには仕事に就けず、親類が運営する教会に寝泊まりして、家族5人、月8万円で生活していたこともある。「養育費があるのと無いのでは生活や気持ちの余裕が違う。一歩踏み出してよかった」。カオリは実感を込めて言う。

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 宗教上の意見の相違をきっかけに離婚を言い出したのは夫の方だった。カオリも早く離婚したくて、養育費を請求しないとする文書に署名した。夫からは、離婚後の4カ月間、月6万円の経済支援を受けた。

 これ以上の要求は無理だろうと諦めていたが、県母子寡婦福祉連合会の助言で、養育費は子どもの権利であり、親の都合で決めるものではなく、仮に親が請求しなくても、子どもが請求できることを知った。

 養育費請求調停の手続きは思ったより簡単で、費用も、子ども1人に1200円の収入印紙と連絡用の切手代だけだった。

 カオリが求めたのは月6万円の養育費、学資保険の名義変更、厚生年金の分割。養育費は若干少なくなったが、請求は三つとも通った。調停では、夫と対面することなく、2回で合意に至り、申し立ての3カ月後には養育費の支払いがスタートした。

 養育費が入る前、母子会から米や缶詰などの食料を譲り受け、しのいだ時期もある。子どもたちを進学させたいと思いながら「私の収入では無理」と諦めていたが、今は「養育費でいくらかはカバーできる」と将来に展望が開けるようになった。

 現在高1の長女は「今月、養育費入ってた?」とカオリに尋ねてくる。入金を告げると「お父さんはまだ私たちのことを思ってくれているんだね」。養育費が、子どもたちが、父親の愛情を確認するツールになっているとも感じている。

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 「養育費の不払いがひとり親家庭の貧困の要因の一つになっている」。養育費問題に詳しい野崎聖子弁護士は、そう指摘する。

 県の調査では、養育費を最初から全く受け取っていない母子家庭は76%に上る(全国61%)。養育費の取り決めをしなかった理由には「相手に経済力がない」「相手に支払う意思がない」が上位に挙がった。

 DV(家庭内暴力)などで、子どもを連れて逃げるような形で離婚する人も多い。野崎弁護士は「養育費を決めずに別れたから、払わないでいいということにはならない。子どもが20歳になるまで、いつからでも請求できる」と説明する。

 その上で、「子どもが育つには多くの費用がかかり、育てない方の親がそれを一部負担するのは当然の義務だ。まず、その認識を社会に広げることが重要だ」と訴えた。(文中仮名)(「子どもの貧困」取材班・高崎園子)