文書が事実なら、安倍晋三首相は国会でウソの答弁を繰り返したことになる。「行政を私物化した」との疑念が広がっており、極めて深刻な事態だ。

 学校法人「加計学園」の獣医学部新設を巡り、愛媛県は、国会の求めに応じ、新たな文書を参議院に提出した。

 新文書によると、加計学園の加計孝太郎理事長は2015年2月25日、安倍首相と約15分面談し、「今治市に設置予定の獣医学部では、国際水準の獣医学教育を目指す」ことなどを説明した。

 安倍首相からは「そういう新しい獣医大学の考えはいいね」とのコメントがあったという。

 同年4月2日には加計学園幹部や愛媛県、今治市の職員らが午前中、内閣府の藤原豊・地方創生推進室次長と会い、午後からは首相官邸で柳瀬唯夫首相秘書官(いずれも当時)と会っていたことが明らかになっている。

 通常ではあり得ないような厚遇ぶりだ。

 新文書によると、柳瀬元秘書官は「獣医学部新設の話は総理案件になっている。なんとか実現を、と考えている」とも発言したという。

 首相は国会で、加計学園の学部新設計画を知ったのは17年1月だと説明してきた。

 新文書の内容は、首相の国会説明だけでなく、柳瀬元秘書官の答弁とも矛盾する。

 官邸ぐるみで加計学園を後押ししていたのではないかとの疑念は、いよいよ深まるばかりである。

 新文書の内容が事実なら内閣総辞職しかない。

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 首相は「念のため官邸の記録を調べたが、確認できなかった」と面談の事実を否定している。だが、官邸の入館記録に記載がなくても、それが面談していないことの証明にはならない。公表すると都合の悪い人の入館は公表されない場合が多いからだ。

 不思議でならないのは、疑惑の渦中にある加計理事長がこれまで、国会の参考人招致にも証人喚問にも呼ばれていないことである。与党側の反対のためだ。

 加計学園の理事長を務める加計氏は首相自身が認める「腹心の友」である。官邸の官僚には、そのことを前提にしたと思われる言動が目立つ。

 藤原地方創生推進室次長(当時)は15年8月、愛媛県今治市に出張した。

 加計学園の車を利用して移動したにもかかわらず、出張記録には「官用車」を使った、と報告していたことが分かっている。

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 加計・森友学園を巡っては、証人喚問や参考人招致が必ずしも真相究明につながっていないのも確かである。

 与党は数の力にものをいわせ「首相が否定しているのだから首相を信じる」との姿勢に終始し、政府側の官僚は平気で虚偽の答弁を繰り返す。

 その結果、新たな文書が公表されるたびに疑惑が深まる、という負の連鎖が続いてきた。安倍首相の政治責任は極めて重い。

 国会には真相究明の責任がある。真相をうやむやにしたまま数の力で国会を閉じることがあってはならない。