春以後の賃金水準などを労使が話し合う春闘に変調が起きた。大手企業が労働者側に一斉に回答した内容は、基本給を上げるベースアップ(ベア)は実現したが、上げ幅は総じて前年を下回った

▼「安倍のベア」ともてはやされた安倍政権による賃上げ要請はことしも続いた。賃上げによる個人消費の拡大、企業業績を伸ばし、経済の好循環をつくる「アベノミクス」の一環である。そのシナリオに狂いが出てきたか

▼日銀は、政府と車の両輪となって円安を「誘導」して企業の好業績を演出してきた。中国経済の減速など世界経済の変調を受け最近は円高に転じている。財界からは「環境の潮目が変わった」とも漏れる

▼政権の賃上げ要請があっても、経営側はさすがに経済の先行きを楽観できず、大幅に上げられなかった。背に腹は代えられないのは当然だが、企業はベア抑制で得た利益をただ銀行に積んでおくだけではつまらない

▼社会の一員として、広がる「格差」の縮小に資源を振り向ける時であろう。4割を占める非正規社員の底上げや、下請けを含めた中小企業社員の賃上げができる取引の実施も方策としてある

▼平等性を高める努力は消費喚起につながり、遠回りであっても企業にメリットをもたらす。好循環を起こす別のシナリオを描く契機となってほしいと願う。(宮城栄作)