短編映画を対象にした世界最古の映画祭「第64回オーバーハウゼン国際短編映画祭」(ドイツ)で7日、那覇市在住の美術家で映像作家の山城知佳子さんが女性監督に贈られる「ゾンタ賞」を受賞した。出品作「土の人」(2017年劇場版)に、審査委員は「作家は戦争とそのトラウマ的な影響に真剣ながらユーモアも交えて向き合っている。個性的で革新的、映画としても最も素晴らしい手法で表現している」と評した。脚光を浴びた映画祭を振り返る。(学芸部・吉田伸)

オーバーハウゼン国際短編映画祭で「ゾンタ賞」を贈られた山城知佳子さん(中央)=7日午後9時20分ごろ、ドイツ・リヒトブルグ映画劇場

上映後に行われたトークで質問に答える山城知佳子さん(中央)=5日

映画祭公式ポスターに採用された山城知佳子さんの作品画像が主会場の入り口に掲げられていた=5日

オーバーハウゼン国際短編映画祭で「ゾンタ賞」を贈られた山城知佳子さん(中央)=7日午後9時20分ごろ、ドイツ・リヒトブルグ映画劇場 上映後に行われたトークで質問に答える山城知佳子さん(中央)=5日 映画祭公式ポスターに採用された山城知佳子さんの作品画像が主会場の入り口に掲げられていた=5日

 「土の人」のラストシーンは青空に生える伊江島の白いテッポウユリ畑。事務局は今年のイメージカラーの黄色に映えると判断。開幕前から注目し、公式ポスターへの採用を決めた。採用された作品は山城作品を含む3作品のみ。

 会場はビム・ベンダースやジョージ・ルーカスら巨匠の作品が上映された伝統的なリヒトブルグ映画劇場。その正面に「土の人」のポスターが会期中、常時掲げられ、オーバーハウゼン市内各地にも貼られた。

 映画祭メインのインターナショナルコンペティション部門には139カ国5921作品の応募中、選考委員会の審査を経て、33カ国53作品が賞候補として上映された。

 「土の人」は映画祭3日目の5日に行われた「プログラム3」でオーストリアやロシア、イスラエルなどの6作品と合わせて上映。その後、ほかの監督たちと共にトークが行われた。司会は選考委員会メンバーが務めた。

 そのうちの1人、バッシリー・ボウリカスさん(ギリシャ)は「『土の人』は字幕がなく意味が聞き取れない言葉とともに極めてゆっくりとした場面から突然激しくなる。スペクタクルな構造で成功している」と講評。「山城さんは映像作家として活動してきたというが、異なる文脈を劇中に取り込んでおり非常にシネマ的。ユリと拍手の場面を見て、アンゲロプロスを思い起こした。映画の影響はあるのか」と母国の巨匠の名前を挙げながら質問した。

 山城さんは「沖縄県立芸大で油絵を学び、写真に挑みながら制作が停滞していた時、まさにアンゲロプロスの映画を見て感動し作品作りが変わった」と応答。会場は一瞬どよめき、作品を通じて理解し合ったような一体感も生まれた。

 作品の着想として、山城さんは辺野古新基地建設に座り込んで抗議している市民運動から得たと解説。沖縄戦の歴史をひもときながら、「戦争を体験していない私たちの世代が記録を語り継ぐ過程で、(声色を変えてさまざまな音を表現する)ヒューマンビートボックスという音楽を通して表現した」と語った。

 7日、リヒトブルグ映画劇場で開かれた授賞式。ドイツの女性団体の名称を冠した「ゾンタ賞」で名前を呼ばれた山城さん。涙をぬぐった後も終始驚きっぱなしで感謝の言葉を口にした。「ほかの出品作で自分たちの問題を扱いながら外に開いている素晴らしいものに出合えた。視野を広く持ちたいと思い、課題を感じていた中で、私が受賞するとは本当に驚いた」と話す。

 「『土の人』はもともとの3画面でアート展を越境し、1画面で作った劇場版で映画祭を飛び回っていて、賞までもらえたというのは非常にうれしい。表現したいことが伝わっていると感じた」と手応えをつかんだ。

 21日にはシンガポール美術館などが3画面の「土の人」が「シグネチャー芸術賞2018」賞候補に入ったと発表した。沖縄の土地に根差し、強靱(きょうじん)さをたたえた「土の人」が世界各地で注目を集めている。