顔を近づけたり、離れたり、作者の思いをくみ取ろうと考え込んだりと、それぞれのスタイルで作品に触れ合う、いつもながらの光景だ。

 「第68回沖展」が19日、浦添市民体育館で開幕した。初日は雨や曇りのすっきりしない天気となったが、訪れた人たちは、会場いっぱいに咲き誇る「春の美」を堪能していた。

 県内最大と形容される沖展の特徴は、美術展でもなく、工芸展でもなく、これらを併せ持った総合展という点である。展示されているのは、絵画、版画、彫刻、グラフィックデザイン、書芸、写真、工芸の7部門の作品。一般応募の中から選ばれた551点に、沖展会員・準会員の力作256点を楽しむことができる。

 沖展は1949年、沖縄タイムスの創刊1周年を記念する事業として始まった。戦争による荒廃と戦後の混乱の中、「郷土再建には文化復興が県民の支えになる」という考えから開かれたものだ。

 当時は大きな美術展を開催できる場所がなく、春休み期間の学校を借り、転々としてきた。現在の浦添に移ったのは第40回展からである。

 沖縄の自然や文化に着想を得た地域性豊かな作品が多いことが市民公募展である「沖展らしさ」で、ここ何年かは、米軍普天間飛行場の移設問題を扱った作品が多いのも特徴である。

 生活に根ざしたテーマと生活から切り離せない政治課題が、沖縄の今という時代を切り取っている。

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 最近、勢いが増しているのが彫刻部門である。一般の応募や展示数はそれほど多くないが、一つ一つの作品が意欲的かつ個性的。はっと目を留め、じっくり鑑賞する来場者が多かった。

 彫刻部門で最高賞に当たる沖展賞を受賞した玉城正昌さんの「芽生」は、米ヒバを使った妊婦像。おなかにそっと手をあてる柔和な表情から、我が子を慈しむ母の愛が伝わる。

 黒光る鉄の素材を生かした大城清久さんの「ハッケヨイノゴリラ」は、力強さといい量感といい迫力満点。正面から見ても、後ろに回っても楽しめ、子どもにも人気の作品だ。

 沖展会員で彫刻家の富元明雄さんは「会員と作者の対話の深まりが、何を造るかという方向性にも影響を与えている。年々充実してきている」と話す。

 ベテランの巧みな表現と若い感性が、互いを高め合っているのだろう。

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 芸術への向き合い方は人それぞれ。

 気に入った作品を繰り返し鑑賞するのもいいし、心動かされる作品の感想を友人と語り合うのもいい。 

 期間中、会場では各部門の沖展会員による解説会も開かれる。専門家の話を手掛かりに作品の背景を理解すれば、新たな発見があるかもしれない。

 沖展は4月3日まで。

 ぜひ、アートと「対話」してほしい。多くの人に鑑賞してもらうことで、出品者の腕も磨かれる