来春から全国の高校で使われる教科書のうち、帝国書院が検定申請した「新現代社会」で、沖縄の米軍基地問題に関連して、「(沖縄)県内の経済が基地に依存している度合いはきわめて高い」などと記述したことについて、同社は5月までに訂正申請する方針を19日、明らかにした。昨年11月ごろから社内で根拠のあいまいさや主観的な記述が問題になり、先月から訂正申請に向けて検討を進めていたという。

 詳しい修正内容は調整中だが、現段階で固まっているのは(1)基地依存度が「きわめて高い」の「きわめて」を削除する(2)「ばくだいな振興資金」との記述は、3000億円という数字を明記する(3)「県内の経済は」は「県内の経済・財政は」に修正する-など。

 そのほか、経済効果が「2000億円以上」との記述の正確性や、全体的なトーンのあり方などについてあらためて精査するという。

 同社の担当者は「最終的には編集部の責任でまとめており、根拠のあいまいな表現があることは反省している。見本本ができる5月までに訂正申請したい」と述べた。

 同教科書の記述をめぐっては、県内で反発が広がっている。

 県民間教育団体連絡会は19日の運営委員会で、同社への抗議について話し合った。構成団体の県民間教育研究所の長堂登志子所長は「沖縄が基地で潤っているというインターネット上のデマと変わらない。普天間飛行場を撤去してくれと多くの県民が求めている中で、基地がなくなれば人がいなくなるかのような書き方は論外」と切り捨てる。

 名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブゲート前の集会でも、「国の主張を正当化するものだ」「過去の経緯を理解していない」などの声が上がった。

 教育支援ネットワークで活動する元高校教諭の知念良吉さん(76)=沖縄市=は「国が優遇措置をとっている印象を与え、辺野古の新基地建設を正当化するようだ」と話した。今回は1社だけだったが、後々、ほかの教科書でも似たような記述が出てくることにつながる可能性を懸念し「危険な傾向だと思う」と語った。

 「間違った情報が流されることは、県民への冒涜(ぼうとく)でもある」と批判するのは、県統一連の瀬長和男事務局長。「政府と沖縄が対立する中、沖縄の声を抹殺しているように感じた。教育の現場で使われれば、事実がゆがめられてしまう」と危機感を募らせた。

■沖縄戦・基地集中の現状と対比

 問題となった帝国書院の記述は、「新現代社会」の「沖縄とアメリカ軍基地」と題したコラム。前半では、沖縄戦で20万人以上が亡くなったことや、沖縄に基地が集中している現状、騒音や墜落の危険性に対して、多くの人々が基地移設を訴えていることを紹介している。

 それに対比させて後半では、「アメリカ軍がいることで、地元経済がうるおっているという意見もある」として、次のように記す。

 「アメリカ軍基地が移設すると、あわせて移住する人も増えると考えられており、経済効果も否定できないとして移設に反対したいという声も多い」「経済効果は、軍用地の使用料や基地内で働く日本人の給与、軍人とその家族の消費などで2000億円以上にのぼると計算されている」「日本政府も、事実上は基地の存続とひきかえに、ばくだいな振興資金を沖縄県に支出しており、県内の経済が基地に依存している度合いはきわめて高い」

 現行本でも似たような記述があり、「経済効果は5000億円という試算もあり、移設後の沖縄経済をどうするのかは大きな問題である」としている。

■「依存度」15・5%→5・4% 基地返還で経済効果

 米軍基地跡地利用の成功や好調な観光産業によって、県内の基地依存度は大幅に低下している。

 軍用地料や基地従業員の給与などの基地関連収入が県民総所得に占める割合は、日本復帰の1972年度の15・5%から、2012年度は5・4%にまで縮小した。

 また、県の試算によると、基地返還が県経済の発展につながっている事例として、25年前に返還された那覇市の新都心地区は、52億円の軍用地料が、跡地利用によって、経済効果は30倍を超える1634億円に増えた。税収は6億円から199億円。

 翁長雄志知事も「基地は経済発展の阻害要因」との説明を繰り返している。