巨人プロレスラーを「人間山脈」と呼び、日本人F1レーサーの粘り強い走りを「刻み納豆走法」と実況した。古舘伊知郎さんの持ち味は、観察に基づいた確信犯的なせりふ回しだった

 ▼月末で降板するテレビ朝日「報道ステーション」で18日、遺言のようなドイツ特集を組んだ。しつこいほど「ヒトラーが日本で出てくることは想定できないが」と繰り返し、逆に注意を引いているようだった

 ▼独裁を「決断できる政治」と言い換え、「この道以外にない」と国民の思考回路をふさぐ。安倍晋三首相ではない。ヒトラーの手法だ。側近のゲーリングは後に「どこの国でも通用する」と語った

 ▼特集の核心は「ワイマール憲法が生んだ独裁の教訓」。最も民主的とされた憲法に埋め込まれた「国家緊急権」を使って、ナチスが合法的に権力奪取するまでを描いた

 ▼国家緊急権は有事に権限を国に集中させる仕組み。今、自民党が改憲の第一歩と位置付ける「緊急事態条項」とよく似ている。麻生太郎副総理が「あの手口に学んだらどうか」と言った通りだ

 ▼何が緊急事態かは首相の一存で決まる。辺野古新基地をめぐる代執行訴訟でも、国は県がすぐに従わないというだけで「非常事態」を主張し、最終手段である代執行を正当化していた。緊急事態の理由も、いくらでもつくれるだろう。(阿部岳)