料理を引き立てる陶器で、高齢者に彩り豊かな食事を楽しんでもらおうと、糸満市与座で「やちむん工房結」を営む壺屋焼職人、賀数郁美さん(34)が25日、那覇市の特別養護老人ホームゆがふ苑(玉城好史施設長)に作品約100点をプレゼントした。施設の高齢者や入院患者らへの寄贈は、10年来思い描く賀数さんの夢。焼き物を手に笑顔いっぱいの利用者に、食べることが大好きだった亡き祖母の姿を重ね「器を通して、活力を取り戻すきっかけをつくれたらうれしい」と期待を込めた。

デイサービスを利用する高齢者たちに壺屋焼を寄贈した「やちむん工房結」の(後列右から)賀数郁美さんと漢那宗貴さん=25日、那覇市・特別養護老人ホームゆがふ苑

 贈ったのはご飯茶わんや小鉢、そばまかい、コーヒーカップなど約10種類の壺屋焼。多くは賀数さんがオリジナルで考案したクバ扇(オージ)の紋様が入っている。わずかな欠損やゆがみ、色むらなどがあるが見た目や使い勝手に遜色はない「B級品」が中心で、陶器市などで格安販売するより「もっと豊かな使い方を」と決意。知人のつながりで寄贈先を探し、ゆがふ苑に行き着いた。苑は定員27人のデイサービス事業で活用する。

 8年前に72歳で亡くなった賀数さんの母方の祖母は、最も進行したステージ4のがんで余命1カ月半と宣告された後、在宅治療を中心に2年生きたという。「家族と県内各地をドライブしたり、好きなものを食べたりしたことで気力を取り戻した。『病は気から』だと思った」。当時、壺屋焼の修行中だった賀数さんは「自分の作品で高齢者においしく食事をしてもらいたい。独立したら寄付するぞ」と誓った。

 25日は工房をサポートする漢那宗貴さん(34)と一緒に、ゆがふ苑に作品を届けた。テーブルに並んだ壺屋焼に、利用者や職員は「ゴーヤーチャンプルーを盛り付けたらおいしそう」「食事が楽しくなる」と大喜び。来月100歳になる利用者の外間マツさん(99)は「食べるのも、飲むのももったいないから、使わないで飾ります」と言い切り、周囲を笑わせた。

 玉城施設長は「安全面や費用面から、施設ではプラスチック製の器が主流だが、施設の都合を押し付けていないかという思いがあった。陶器での食事の提供は2年前の開設当初からの夢でもあり、かなってうれしい」と話した。

 賀数さんは今後も各地への寄贈を続け、子ども食堂などで絵付け体験してもらう取り組みも始めるという。「収入が安定しないからと陶芸に反対していたおばあちゃんに、活動を報告したい」と胸を張った。