日本大学のアメリカンフットボール部による「悪質タックル問題」は、日増しに事態が深刻化している。

 事の発端は、5月6日に行われたアメフトの春季交流戦 定期戦で、日大の選手が関西学院大学の選手に悪質なタックルを行い負傷させたこと。その後、この試合を巡って大きな騒動に発展。5月22日にはタックルをした日大の選手が記者会見を開き、「監督の指示があった」と明言した。

 「コーチから『監督にお前をどうしたら試合に出せるか聞いたら、相手のクォーターバックを1プレー目でつぶせば出してやる』と言われた」

写真を拡大 問題が起きた関西学院大学と日本大学の定期戦(出典:関西学院大学アメフト部の公式動画サイト

 これに対して日大側は、内田正人前監督や井上奨コーチが指示したことは認めつつも、「つぶす」などの言葉の捉え方に違いがあったと応じている(5月23日の会見で内田前監督は「私の指示ではない」と説明)。ただ、いずれにしても、監督やコーチが立場上どうしても弱い選手に対してパワハラといえる行為に及んだことは動かざる事実だろう。

 スポーツの世界では昔からこのようなことは当たり前だとか、日大の誠意のない対応に憤りを感じるだとか、ネットではさまざまな意見が飛び交っているが、この記事では騒動そのものについて論じるつもりはない。

 ただし、ビジネスの現場に置き換えると、ふと気付くことがある。日大アメフト部のような組織構造上の問題は多くの企業においても存在し、時として上司から部下へのパワハラが横行するのである。同じように考えたビジネスパーソンも多いはずだ。

 有無を言わさぬ経営トップからのプレッシャーによって社員が粉飾決算やデータ改ざんといった不正に手を染め、濡れ衣を着せられる。実際、そうやって退職に追い込まれた社員は少なくないだろう。

 実態はどうだろうか。企業の不祥事に詳しい東京商工リサーチ 情報本部の松岡政敏氏は「東芝に代表されるように、経営トップの不当な指示は後を絶たない」と話す。

 東京商工リサーチは上場企業を対象に「不適切な会計・経理の開示企業」を毎年調査しているが、会社資金の着服横領などが発覚する企業は依然としてなくならず、とりわけ東証1部上場企業の増加が目立つそうだ。2017年は調査開始以来、最多の30社を記録した。

 こうした不正がすべてトップの指示で行われたという確証はないが、「第三者委員会の報告書などを見ると、そうした企業があることは明白」と松岡氏は説明する。

 例えば、会計の不祥事があった半導体製造装置メーカーのアピックヤマダは、以下のような報告がなされている。

 「アピックヤマダ(株)2017年3月度売上高の半数以上が、売上計上基準を逸脱した物が売上計上されている。経営トップの指示で、ISO・内部統制など関係ない! 売上に上げられる物はどんな手段を使っても期末に売上に上げろ!」との記載があり、また、「売上基準逸脱内容」として、「残件が残っていても、納品作業書に記載せず、合格と記載させ、残件は別途内緒で処理。納品作業もしていないのに、納品作業書を偽造・指示(特にA国、現地サービス会社外注先A社)。顧客合格署名偽造、顧客に署名させるペンを購入し、そのペンを修正用とし保管」との記載があった。

 不適切な会計処理の疑いが発覚して上場廃止となったスーパーマーケットのドミーも、経営トップの強烈な影響力が末端にまで及び、不正に走ったことが明るみに出た1社だ。

 A会長が役職員に対し、直接、不正行為を行うように指示した事実は、認められなかった。しかしながら、D社(ドミー)において、A会長の存在が大きなものとなっており、A会長が各店舗を減損処理されることを嫌い、売上や粗利を上げるようにと言えば、各役職員は、A会長の意向を忖度して、減損の懸念がある店舗のために、無理な売上や粗利益を作らなければいけない雰囲気があった。