2012年、米中央情報局(CIA)が沖縄世論を研究するためにまとめた解説書には、政治家だけでなく、ミュージシャンや作家、歴史家などの名前や発言などが取り上げられていた。知らないうちに調査の的になっていた人たちは報道を受けて28日、一様に驚いた。

CIAの解説書「沖縄における基地と政治」

 対馬丸記念会の高良政勝理事長(78)の名前は、同記念館のウェブサイトに掲載された理事長メッセージとともに記されていた。

 メッセージは「記念館をとおして、戦争と平和、命の尊さについて子どもたちと大人が共に考えてほしい」との内容。解説書では県民の意識について「被害者意識がアイデンティティーの中心にある」と批評しており、高良理事長のメッセージは「被害者意識」の物語を証明する材料として提示されている。

 高良理事長は「ごく普通の民間人の名前が書かれていることに驚いた。そこまで調査しているのかと、怖くなった」。

 CIAの批評には「米国を敵視しているわけでもなく、被害者意識でもない。戦争や紛争が絶えず、多くの子どもたちや民間人が犠牲になっている。歴史的事実を共有し、未来に正しく伝え継ぐことが必要との思いで活動している」と語気を強めた。

 読谷村在住の平和運動家で僧侶の知花昌一さん(70)は、2011年に県外で講演した内容を分析されていた。「CIAが(私を)基地反対運動家として認めていることは悪く思わない」とする一方、「沖縄のことを細かく分析して対策を練っていることが分かった。そこまでやるのかとびっくりした」と驚いた。

 元副知事で歴史家の高良倉吉琉大名誉教授(70)は、琉球王国の交易ネットワークを「海のシルクロード」と表現した人物として紹介されている。

 高良名誉教授は「基地や政治だけでなく、音楽や歴史など県民の価値観にまでアンテナを広げて調べたことに驚いた」と強調。「情報がどこまで精度の高いものかは分からない。沖縄の等身大の情報を正確に把握し、米側が沖縄を理解する上で情報利用しているなら意味があるかもしれない」と話した。

 県議の玉城満さん(59)は、11年6月のNHKの番組で笑築過激団の座長として登場し、方言札について「忘れられない記憶」と表現したことに触れられていた。玉城さんは「芸能や文化が沖縄のアイデンティティーを目覚めさせるのではないかと、CIAが警戒していたのではないか」と指摘した。

SNSも対象か

◆佐藤学沖縄国際大教授

 どういう意図でCIAが調査しているのか分からないが、単純に見れば、沖縄は米国が治めている場所という意識があるのではないか。調査する背景に何があるのかを知りたい。

 ただ、今回明らかになった調査の対象は、ミュージシャンや作家などの公に出ている発言や情報だ。CIAは、公に出てこないSNSの個人情報も調べているのかもしれない。それが懸念される。(政治学)

県民性示す好機

◆我部政明琉球大教授

 外国の沖縄で起きている問題で米国の利益が失われないために何をすべきかという危機感からの調査だろう。米国が何をやっているかは記されていないが、12年以降それに沿った措置を取ったのではと考える。

 前向きに捉えれば、沖縄は多様な意見、批判を理解した上で、県民自らの考えに基づき物事を決めているという開かれた社会であることを示すいい機会だと思う。(国際政治学)

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