ベルギーの首都ブリュッセルの地下鉄駅と国際空港で発生した同時テロは24日までに31人が死亡。現地在住の日本人2人を含む200人以上が負傷した。在ベルギー日本大使館は、そのうち30代の日本人男性1人が意識不明の重体であることを明らかにした。

 中東の過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明を発表しているが、関与の証拠はなく自発的テロの見方も強い。非道な暴力であり断じて許せない。

 ブリュッセルは欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)の本部がある、いわば「欧州の首都」。欧米などの有志連合は、ISが支配地を築くシリアやイラクで空爆を続けている。今回のテロは、昨年11月のパリ同時多発テロに続く欧州への「報復」とみられている。

 パリのテロ以降、欧州は警戒態勢を敷いていた。ベルギーでは国内警戒レベルを最高に次ぐ「3」とし、ベルギー警察はテロの4日前、パリの実行犯でフランス人の容疑者らを拘束していた。それでもテロは発生した。

 実行犯は4人とみられている。武器の小型・高度化が進む現代、誰もがそれを手にしうる社会では、どれほど警戒してもテロの未然防止は難しい。

 そうしたテロへの制裁として欧米はISへの空爆を激化させた。その結果、爆弾は小学校や医療施設などにも落ち、子どもを含む大勢のシリア・イラク市民が命を失っている。そしてテロが再び繰り返された。テロ撲滅を名目にした軍事行動が、テロを誘発している。

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 テロの脅威は、日本にとっても対岸の火事ではない。

 昨年、パリ同時多発テロの現場を訪れ花をささげた安倍晋三首相は「試練の時を迎えたフランスと日本は常に共にあります」と、フランスのISへの空爆を支持する考えを示唆した。今回も「日本と価値を共有するベルギー、欧州連合が困難に直面している今、強い連帯を表明する」と欧米との協調姿勢をアピールする。

 29日施行される安保法の存在が、この首相発言と重なり今、日本に暗い影を落としている。欧米の軍事行動への本格的な参加が、現実味を帯びているのだ。空爆とテロの応酬を見れば、それが今後、日本でのテロ実行の引き金となりかねないことは明白だ。

 パリの実行犯はフランスやベルギーで育った若者たちだった。ベルギー同時テロの実行犯も欧州育ちだということが判明している。テロの脅威はISなど外から来るのではない。各国の内にある。

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 欧米では内なる脅威の原因を、増え続ける移民や難民に転嫁する主張もあるが、誤りだ。イギリスやオーストリアの少女もISへ出国している。トルコのメディアは23日、ISに参加しようとしていた20代の日本人男性が身柄を拘束されたと報道した。

 テロ発生のたびに繰り返されてきた武力による対処は何の成果も出していない。差別や格差、貧困などテロの背景にある原因に目を向ける、根本的な解決こそが急がれる。