大津地裁の仮処分決定で、関西電力高浜原発3、4号機(福井県)の運転が止められた。初めてのことだ。よほどショックだったようで、財界から批判が相次いでいる

▼関西経済連合会の角和夫副会長(阪急電鉄会長)は「なぜ一地裁の一人の裁判長によって国のエネルギー政策に支障をきたすことが起こるのか」。運転を止める仮処分の申請自体を禁じる法改正を求めた

▼当事者である関電の森詳介会長も「不当な決定は取り消しを」と主張した。原発は国策。電力会社は国と一体の存在で、過ちはあり得ない-。福島第1原発事故を生んだ業界のおごりは、5年たった今も全く変わっていない

▼関電は八木誠社長も「(訴えた住民への)損害賠償請求は逆転勝訴すれば考えられる」と発言した。「後で痛い目に遭わせてやる」というのだ

▼強者が弱者を黙らせるための訴訟をスラップと呼ぶ。東村高江のヘリ着陸帯建設では、国が反対住民を訴えた。司法の独立につゆほども敬意を払わず、一方で目的達成の道具として利用する

▼これまでは司法の側も強者の肩を持つことが多かった。しかし原発事故を機に一線を画し、安全性を見極める責任を引き受け始めたようだ。「単に発電の効率性をもって甚大な災禍と引き換えにすべき事情とは言い難い」。国や業界はどう聞いただろうか。(阿部岳)