釈然としない思いを抱く人は多いはずだ。

 学校法人「森友学園」への国有地売却に関する決裁文書改ざん問題で、大阪地検特捜部は虚偽公文書作成容疑などで告発された当時の財務省理財局長の佐川宣寿前国税庁長官を不起訴処分にした。

 売却価格が8億円余り値引きされた土地取引を巡る背任容疑でも、交渉時の理財局長の迫田英典元国税庁長官を不起訴処分にした。

 財務省幹部ら38人全員が不起訴処分となり、一人も刑事罰に問われない。

 特捜部は改ざんは契約内容や金額など根幹部分に変更はなく、虚偽とまで言えないと判断したという。

 14件にも及ぶ決裁文書が300カ所も改ざんされた。安倍昭恵首相夫人や政治家に関する部分、「本件の特殊性」「特例的な内容」などの文言が削除され、学園との交渉記録が廃棄された。検察内部には積極捜査を支持する意見もあったとされ、不起訴処分が適切だったのかどうか疑問が拭えない。

 背任容疑の焦点は国有地で見つかったごみの撤去費8億円余りの妥当性だった。特捜部は「国に損害を与える目的が認められるのは困難」と結論付けている。

 だが会計検査院は値引き額が最大6億円過大だったと指摘。独立機関との見解に相違があり、疑念が残る。

 佐川氏の国会答弁との整合性をとるために改ざんや廃棄が行われたとされる。

 だが8億円もの値引きが行われたのはなぜか。佐川氏ら財務官僚が改ざんに手を染め、虚偽答弁を繰り返したのはなぜか。核心部分は依然として、未解明のままだ。

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 不起訴になったからといって、公文書に対する信頼性を失わせた責任がなくなるわけではない。

 今月4日に公表される財務省の調査報告書には、部下が作成した原案を基に佐川氏が改ざん部分を決めていたことが盛り込まれるという。国税庁長官を辞め、国家公務員ではない佐川氏を「懲戒処分相当」として扱い、退職金の減額を検討している。

 交渉記録を「破棄した」と虚偽の答弁をした回数は佐川氏が計43回、麻生太郎財務相は11回に上る。佐川氏の虚偽答弁は国民を欺くもので、麻生氏の監督責任も免れない。

 佐川氏は国会の証人喚問で「刑事訴追の恐れがある」ことを理由に証言拒否を連発した。改めて国会の証人喚問に応じ、包み隠さず証言してもらいたい。

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 佐川氏らを告発した大学教授らは処分を不服として検察審査会に審査を申し立てる。11人の一般市民で構成される検審の判断次第では再捜査、強制起訴もあり得る。

 刑事罰が見送られたことによって国会の役割がさらに重要になったといえよう。これで幕引きとするなら国会は自ら権威をおとしめる。

 安倍晋三首相は先の衆参両院の集中審議で改ざんについて「首相として責任を痛感している」と言っている。ならば、国会に調査特別委員会を設置して真相究明に当たるべきである。