金武小学校近くで50年以上営業を続け、町民から「きんぶん」の愛称で親しまれる本と文具の店「金武文化堂」(沖縄県金武町金武)が、老朽化で建て替えられる。店が入る建物は、琉球政府立法院議事堂や當山紀念館などを手掛けた沖縄を代表する建築家、故大城龍太郎さんが設計し、築60年を超えた。代表の新嶋正規さん(54)は「私が生まれる前からあり、私も住民も愛着の強い建物。建て替えは残念だが、子どもたちがもっと集まる店にしたい」と語った。(北部報道部・村井規儀)

故大城龍太郎さんが設計した建物に入る金武文化堂

昔話で盛り上がる新嶋正規さん(左)と仲間千紗さん=1日、金武町金武・金武文化堂

故大城龍太郎さんが設計した建物に入る金武文化堂 昔話で盛り上がる新嶋正規さん(左)と仲間千紗さん=1日、金武町金武・金武文化堂

 現在の場所で建て替え、新店舗は来年1月に完成する予定。

 金武文化堂は新嶋さんの父良忠さんが1960年前後に開いた。バラックやかやぶきが多かった当時、2階建ての鉄筋コンクリート造りは珍しく「店名ではなく、『鉄筋ヤー』でも通じた。外観に曲線を取り入れたデザインも最先端だった」(新嶋さん)。本と文具以外にも、化粧品や電化製品など需要があれば何でも販売したという。

 20年ほど前に経営を引き継いだ新嶋さんは、午前7時半から店を開ける。朝から鉛筆などを買う児童や待ち合わせでにぎわい、放課後は駄菓子を買い求める子どもたちの金銭感覚やマナーを学ぶ場になる。

 新嶋さんは「10円、20円の駄菓子に利益はないが、子どもの居場所づくりには代えられない」と目を細める。インターネットの普及で全国的に書店経営は厳しく、幅広い客層を取り込もうとブックカフェなどを検討したこともある。その度に「子どもを大事にした父の思いと、地域での書店の役割」に照らし、昔ながらのスタイルを守ってきた。

 建て替えの決断は、ひび割れや雨漏りなど建物の劣化が進む中で、子どもたちが安心して利用できるかを熟考した結果だ。

 建て替えを知り、足を運ぶ人もいる。金武小に通っていた仲間千紗さん(24)は「用事がなくても毎日寄って、ゆんたくした場所」と名残惜しそうに写真を撮っていた。

 2日まで営業し、4日からは約120メートル離れた仮店舗で営業する。大城さんと父へ敬意を表し、新店舗の外観の変化は極力抑える。「『あれ、どこが変わったの?』と不思議に思ってもらえればいいな」と新嶋さんは笑った。