やんばる地域などの世界自然遺産推薦が取り下げられた。

 環境省は来年2月までに推薦書の再提出を目指す考えだが、登録を確かなものにするには、出された「重い宿題」に正面から向き合わなければならない。

 政府が「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」の世界遺産推薦取り下げを決定したのは、ユネスコの諮問機関である国際自然保護連合(IUCN)から「登録延期」の勧告を受けたためだ。

 いったん取り下げて、再挑戦する方が早道と判断したのだろう。

 国内最大級の亜熱帯照葉樹林が広がり、世界でここにしかいないヤンバルクイナやノグチゲラなどが生息するやんばるの森は沖縄が誇る「宝」。にもかかわらず取り下げの決定を県民が冷静に受け止めているのは、勧告にうなずくところが多かったからである。

 IUCNが示した懸念の一つが、2016年に一部返還された米軍北部訓練場の跡地が推薦地域に含まれていないことだ。

 政府は早期に「やんばる国立公園」に編入し、推薦地に追加し、最短で20年の登録を目指すという。

 ただ跡地の土壌からは世界遺産のイメージを壊しかねない毒性の高い農薬が検出され、米軍が廃棄したとみられる訓練弾などが見つかっている。

 詳細な調査と汚染源の除去が優先されるのはいうまでもない。

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 ゾーニングを巡っては、「飛び地」が複数あるなど狭い推薦地が点在する問題も指摘されている。世界遺産を包むように設けられる「緩衝地帯」も、やんばるの東側にはほとんどない。

 推薦地がいびつな形となっている要因が、返還されていない北部訓練場にあるのは明らかだ。

 危惧されるのは北部訓練場でのオスプレイ訓練に伴う排ガスや下降気流、低周波音が動植物に与える影響である。隣り合う基地に何の規制もかけずに生態系を守ることができるのか。

 やんばるを一つの大きな森としてまとまりをもった世界遺産地域とするためには、ゾーニングの見直しが求められる。

 本来なら北部訓練場の全面返還が望ましい。しかしそれが現実的でないというのなら、演習が遺産にマイナスの影響を与えないよう共同管理を米軍に要請すべきだ。

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 島という閉鎖的な環境で形成されてきた琉球諸島の生態系は思いのほかもろく弱い。

 地域経済の振興はもちろん大切だが、自然に悪影響を与えては元も子もない。登録後、観光客が一気に増えるオーバーユース(過剰利用)対策や外来種対策は、今から戦略的に取り組まなければならない課題である。

 かけがえのない自然遺産を次代へどう引き継いでいくか。

 登録に向けた運動の中で、県民一人一人がその価値と貴重性を深く理解していく必要がある。