歴代政権が憲法9条の下で禁じてきた集団的自衛権の行使を可能にし、他国軍の後方支援など自衛隊の活動を飛躍的に拡大させる安全保障関連法が、きょう施行された。

 戦後日本の安保政策の大きな転換点となるだけでなく、「法的安定性は関係ない」と言い切った首相補佐官の本音発言に象徴されるように、「法の支配」や「立憲主義」をも深く傷つけた法律である。

 憲法9条は、日本が直接攻撃を受けていないにもかかわらず、他国防衛のために海外で武力を行使することを認めていない。例外を認めた規定も存在しない。安保法に対しほとんどの憲法学者が「違憲」で一致しているのは、集団的自衛権の行使容認が憲法解釈の限界を超えているからである。

 違憲の疑いが濃厚で、国民の支持も得ていない法律によって、自衛官を危険にさらしていいのか。

 今春、防衛大学校を卒業した学生の任官拒否が47人と昨年の倍近くに増えたことを、政府は深刻に受け止めるべきだ。

 問題は多岐にわたっている。安保法は廃止すべきである。

■    ■

 ここでは四つの問題を指摘しておきたい。

 まず集団的自衛権の行使容認の閣議決定に際し、内閣法制局が検討過程を公文書として残していなかった問題だ。

 これでは集団的自衛権行使が、どのような協議を経て認められたのかを検証することができない。国民に対する説明責任を放棄したのと同時に、政府の憲法解釈の監視役を担う役割も放棄したのである。

 野党側が憲法53条に基づき要請した臨時国会召集を、安倍政権が見送ったのもあまりに一方的だった。自民党の改憲草案に、衆参いずれかで4分の1以上の議員が要求すれば「20日以内に召集」と書き込んでおきながらである。

 安保法成立のためには通常国会を大幅延長するが、その説明責任が求められる臨時国会は開かない。ご都合主義も甚だしい。

 法律が複雑で分かりにくいのは、そのあいまいさにも原因がある。

 他国への攻撃が、日本の「存立危機事態」に当たると判断すれば集団的自衛権を使った反撃を認めているが、どのような事態が存立危機で、誰が判断するのか。3要件があいまいで、時の政権による恣意(しい)的判断の恐れが消えない。

 日本の主権に関わる重大な問題も見過ごせない。

 安保法案は慎重審議を求める圧倒的世論を無視して、衆参両院で強行採決を繰り返し成立した。一方、米国に対しては法案提出前に安倍晋三首相が「この夏までに成就させます」と約束していたのである。

■    ■

 安保法と辺野古の新基地建設は密接に関係している。二つを結びつけているのが昨年4月に改定された日米防衛協力指針(ガイドライン)である。

 安保法によって自衛隊の活動は大幅に広がり、ガイドラインによって自衛隊と米軍の協力関係や共同作戦も飛躍的に拡大することになる。沖縄の演習場や周辺海空域における日米共同訓練の頻度が高まりそうだ。

 自衛隊と米軍の一体化が進めば、米国の軍事行動に巻き込まれる可能性も増す。負担軽減の掛け声とは裏腹に、沖縄では軍事的負担の増大が懸念される。

 大規模な反対運動が展開された安保法の成立から半年余りがたった。違憲の疑いやさまざまな疑問は今も解消されていない。 

 すでに決まった政策に従わざるを得ないという「既成事実への屈服」が、日本を戦争に導き、破滅の淵に追いやった歴史の事実を忘れてはならない。

 大学生らのグループ「SEALDs(シールズ)」などの市民団体は「法廃止」を掲げ、全国でデモや集会、署名活動を続けている。

 憲法の平和主義や立憲主義を守ろうという60年安保以来の大きなうねりを、どのように維持していくか。運動の側も試されている。

 最大の試金石は夏の参院選だ。