震災から7年も過ぎて見つかるなんて-。東日本大震災で被災した岩手県の漁船「龍神丸」がこのほど、沖縄県今帰仁(なきじん)村古宇利島沖で発見された。連絡を受けた所有者の大石秀男さん(65)=岩手県山田町=は「津波で全壊したと思っていた。小船で沖縄までどうやって漂着したのか」と驚く。3日、息子の大石龍也さん(37)が東京から来県し、龍神丸と対面した。

「最後に見たのは8~9年前かな」。古宇利島沖で発見された東日本大震災の被災船「龍神丸」と対面する大石龍也さん=3日、今帰仁村運天

 村役場などによると、龍神丸は5月27日午前10時ごろ、古宇利島沖約500メートルの海上で、船首を海面に浮かべて漂流しているのを今帰仁漁協の神谷繁良さん(61)が発見した。同漁協の澤岻富啓さん(61)が運天漁港までえい航。船には藻がびっしり付着していたが、登録番号から被災漁船と判明したという。思わぬ発見に2人は「漁師にとって船は家族と同じ。よくぞ沖縄まで来た」と感無量の様子だった。

 龍神丸は全長約7メートル、重量0・8トンの小型漁船で、秀男さんは養殖のカキやホタテの収穫に使用していた。

 山田町は震災で約800人の死者・行方不明者が出たほか、家屋の7割が流されるなど大きな被害を受けた。消防団に所属していた秀男さんは防災活動に駆け回り、自身の船を避難させる余裕はなかったという。自宅ともう1隻の大型漁船も流されてしまい、「小さな龍神丸は無理と諦めていた」と振り返る。

 それだけに発見の喜びはひとしお。「太平洋から潮に乗ってアメリカ西海岸を回ってきたのかも」と声を弾ませた。

 父の代わりに来県した龍也さんは、龍神丸の姿を懐かしそうに見た。青色の船内塗料はすっかり落ち左舷の割れ目も痛々しいが、原形はほぼとどめており「信じられない」と驚く。

 龍神丸は大石家の屋号。震災後、秀男さんが新たに購入した3隻の船名は全て龍神丸で、龍也さんが東京都で開く居酒屋にも龍神丸の名が付く。龍也さんは「7年間頑張った証し」として船首に取り付けられた船名プレートを持ち帰り、店内に飾る予定だ。

 被災した龍神丸の今後は、今帰仁村が検討中。龍也さんは「展示など活用法があれば喜んでお任せしたい」と話した。