安全保障関連法が施行され、2016年度予算が成立したのを受け、安倍晋三首相の「次の手」に与野党の関心が集まっている。

 17年4月に予定されている消費税率10%への引き上げを延期し、衆院を解散して夏の参院選と抱き合わせ、衆参ダブル選挙に持ち込む。そんな憶測が与党の中でも公然と語られるようになった。

 改憲勢力が衆参両院で3分の2以上を占めることになれば、憲法改正を発議することができる。安倍首相が選挙の先に見すえているのは憲法改正だ。

 首相は憲法改正のため、選挙に勝つことを何よりも優先するだろう。

 だが、「増税再延期を大義名分にして衆院を解散し、衆参ダブル選挙に打って出る」のは、自分の都合しか考えない身勝手なやり方である。大義なき解散権の乱用というしかない。

 14年11月に増税の延期と衆院解散を表明した際、安倍首相は「再延期はない。はっきり断言します」とたんかを切った。18日の参院予算委員会では「リーマン・ショック、大震災級の事態にならない限り、予定通り引き上げる」と答弁している。

 再延期を決めるのであれば、潔くアベノミクスの失敗を認め、公約を実現できなかった責任をとるべきだ。

 増税の再延期とダブル選挙を抱き合わせるのは、増税を望まない有権者に再延期をアピールして議席の上積みを図り、同時にアベノミクスの失敗を帳消しにするという一石二鳥をねらった手法である。

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 2日の参院予算委で安倍首相は憲法改正について「私の在任中に成し遂げたい」と、踏み込んで本音を語った。14日の参院予算委では「今後とも公約に掲げて訴えていく」とあらためて強い意欲を示した。

 ところが、憲法のどの条項を、何のために、どのように改正したいのか、という肝心な点には何も触れていない。

 自民党の中には「すぐに9条を改正するのはハードルが高いので、まずは理解が得られやすい緊急事態条項から」との考えもある。

 安倍政権が当初もくろんでいたのは、改憲手続きを緩和するための96条先行改憲だった。これが「裏口入学」だと批判されたため、その手法を引っ込め、代わりに「お試し改憲」を打ち出した。それが緊急事態条項である。

 緊急事態条項は、憲法が保障する権利や自由を政府の一存によって制限する条項である。法改正でも対応可能なものをなぜ、今、憲法に盛り込む必要があるのか。

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 憲法改正は、国のかたちをかえるだけでなく、国際社会に対してのメッセージにもなる。どの政権のもとで、どの時期に実現するか。その点も考慮しなければならない。

 そもそも日本の政治は今、国論を二分して憲法改正に血道をあげる余裕があるのか、大いに疑問だ。社会保障制度の抜本改革、所得や地域間格差の解消、非正規雇用問題、子育て世代への支援など、憲法改正より優先して取り組むべき課題は山積している。