安倍晋三首相への忖度(そんたく)が色濃く浮かび上がる報告だ。 

 森友学園への国有地売却を巡る決裁文書改ざん問題で、財務省が調査報告書をまとめた。

 当時理財局長だった佐川宣寿氏の主導で理財局や近畿財務局が行ったと認定する内容で、佐川氏を停職3カ月相当とするなど関係者20人の処分を発表した。

 民主主義の土台をも揺るがす不正は、なぜ起こったのか。

 安倍首相の妻、昭恵夫人の名前が消されるなどの改ざんは、国有地の大幅値引きという不可解な取引が発覚した昨年2月以降に生じている。

 報告書によると、佐川氏が「政治家関係者の記載のある文書は外に出すべきではない」などと発言したことを受け、部下が夫人に関する記述や国会議員秘書による照会記録を削除している。 

 交渉記録を巡っては、昨年2月に安倍首相が国会で「私や妻が関係していたなら、首相も国会議員も辞める」と答弁したのを契機に、夫人の名前が入った記録を廃棄していた。

 動機は、国会審議で森友学園が大きく取り上げられる中、質問につながる材料を極力少なくすることだったという。

 一見もっともらしく聞こえる説明だが、問題は国民の「知る権利」を傷つける不祥事に、なぜこれほど多くの官僚が手を染めたかである。

 為政者に都合のいいように事実をねじ曲げうその答弁までした背景こそが問われているのだ。

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 一連の問題行為は麻生太郎財務相に報告されなかったといい、記者会見で改ざんが起きた理由を問われた麻生氏は「分かれば苦労しない」と言い放った。

 財務省の最高責任者とも思えない、人ごとのような言い方だ。

 麻生氏は改ざんは組織的なものではないとも語っている。

 財務省理財局から近畿財務局へ指示があり、財務局では多くの職員が反発したにもかかわらず理財局の立場をおもんぱかって協力したというのに、これが組織的関与でなく何というのか。

 国会では「廃棄した」と虚偽の答弁を繰り返した上、文書を改ざんし、国民を欺き続けた前代未聞の事件である。

 麻生氏は閣僚給与1年分を自主返納することで続投する意向を表明しているが、大臣としての監督責任からは逃れられない。

 組織の長として責任をとって辞任するのが筋だ。

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 この問題で安倍首相は「行政への国民の信頼を損なう事態」と述べている。損なわれているのは政治の信頼である。

 公文書を巡っては森友の他にも、加計学園に関する問題、陸上自衛隊の日報隠蔽(いんぺい)問題など不祥事が続発している。 

 財務省の不祥事の責任は大臣にあり、行政の最終責任者は首相である。 

 行政の中に漂う「腐臭」を一掃するには、政治家がきちんと責任を取らなければならない。