「信頼していた上司からのセクハラが原因で会社を辞めた」「セクハラを繰り返す上司の席に隣り合う右半身だけに出るじんましんと肌荒れに悩まされた」。以前、取材した女性たちはそんな被害を吐露した

▼改正男女雇用機会均等法で、セクハラ防止のため事業主に相談体制や啓発などが義務付けられたころ。働く権利や人権が侵害される現状を目の当たりにした。その後も法改正や対策は進んだが、セクハラの相談は一向になくなっていない

▼国際労働機関(ILO)の委員会が、職場でのセクハラや暴力をなくす国際基準の枠組みとして、拘束力を持つ条約を制定する方針を決めた。世界各国で性暴力などの被害を訴える運動が広がる中、初の基準制定への一歩に期待がかかる

▼だが、日本政府はこの議論に二の足を踏んでいる。欧州諸国などが条約制定を強く訴えているのに対し、日本は拘束力がない勧告が望ましいという態度だ

▼「セクハラ罪という罪は存在しない」との答弁を閣議決定するような国だからか。消極姿勢は職場でのハラスメントという暴力を許さない潮流に逆行し、国際社会から取り残されかねない

▼セクハラ被害を訴えられずに苦しむ労働者は少なくないはずだ。男女問わず、働く権利をも奪いかねない暴力を禁止する国内の法整備も必要だろう。(赤嶺由紀子)