一番分かりやすい便秘は大腸がふさがって便が出ない場合である。検査で腸の狭い部分を見つけ、外科手術で解決する。ところで漢方外来には普通の下剤が効かないか、強すぎて困るという方が見える。腸がふさがらないのに便秘する場合を機能性の便秘という。その中にけいれん性便秘と弛緩(しかん)性便秘、直腸性の便秘がある。

 直腸性の便秘は便意の起こる時に我慢するため便意を感じなくなる便秘で、比較的強い下剤の桃核承気湯(とうかくじょうきとう)などを服用し、便意が起こる時我慢しないでトイレに行くように指導する。

 けいれん性の便秘というのはストレスによる腸の収縮する力が強すぎて腸が緩まないので便がスムーズに出ない。ストレスを緩和し腸の筋肉の緊張をゆるめるような桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)や加味逍遥散(かみしょうようさん)などの漢方薬が効くとされる。

 これらに対して分かりにくいのが弛緩性の便秘である。大腸の平滑筋の緊張が弱くて、便を押し出す腸の蠕動(ぜんどう)運動の力が弱いので便が出にくい。腸の力が弱いから、普通の下剤を使うと無理やり押し出すので、あとで疲れて下剤を続けられない。

 元気のない状態を漢方では気虚(ききょ)といい、元気を補う補気の作用を持つ漢方薬で腸の元気をつけ、蠕動運動を高めて便を出す力を強くする体にやさしい治療になる。補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、小建中湯(しょうけんちゅうとう)、大建(だいけん)中湯などを使うが、処方名の「中」は胃腸のことを表し、補中、建中は胃腸を元気にするという意味である。

 疲れやすい、だるいなどの症状のある場合は補中益気湯や小建中湯、腹が冷えておならがよく出て、ガスがたまり、腹が張る場合には大建中湯がよい。これでスムーズに便が出ればよいが、あと一押しというときに緩下剤の麻子仁丸を一包だけ加えるとちょうど具合のいいことがある。また腹を冷やさないように冷たい飲み物食べ物は避けるべきである。

 もう一つの厄介な便秘は腸内乾燥型便秘である。年をとると体の水分量が減ってくるので、全身に乾燥による症状、口腔(こうくう)乾燥、ドライアイ、乾燥肌などが見られる。大腸も乾燥するので便の水分も極端に少なくなり、ウサギのふんのような乾燥したコロコロ便の便秘になる。

 このように水分の少なくなった病態を漢方では陰虚(いんきょ)といい、滋陰(じいん)すなわち組織に潤いを与える漢方薬を使う。代表的な処方は八味地黄丸(はちみじおうがん)、便秘の時は麻子仁丸(ましにんがん)や潤腸湯などがよい。年をとると口乾きを感じにくいので、こまめに水分を取るように注意する。

 たかが便秘ではあるが案外に難しい場合がある。(仲原靖夫 仲原漢方クリニック)