5月末、沖縄タイムスで開催した写真展「カラーでもっとあんやたん AIで振り返る戦後沖縄の風景」。そこに持ち込まれた1枚のモノクロ写真。ケロヨンを囲んで楽しそうに笑う男の子と女の子の姿がある。

 

 持ち主は浦添市のSさんだ。「写るのは妻と義兄。店頭に置かれていたケロヨンと毎日遊んでいた思い出があります」とのこと。

 写真展では、早稲田大学の石川博研究室が開発したAI(人工知能)の技術を使って、来場者が持参したモノクロ写真に色付けをする取り組みをした。そのため、筆者は戦前、戦後の貴重な写真を数百枚も目にしていたし、色付けもしていた。

 「薬局の前によくカエルのキャラクター置かれてたな~。あぁ、懐かしい」。
 そんな軽い気持ちで写真を眺めていた。筆者は別の写真のカラー化に取りかかっていたため、隣の席の先輩が色付けを始めた。

 しかし、首をかしげている。

 「ケロヨンがどうしてもオレンジ色になるんだよね」

 

 「もしかして、昔はオレンジだったのかな」

 「いや、ケロヨンって緑のイメージですよね。オレンジ色のカエルって、記憶にありません。AIが学んだデータセットにさすがにケロヨンはいないと思いますけど、AIが大きく外すことはめったにないですよね」

 本当は、オレンジ色だったのかもしれないし、緑だったのかもしれない。そんな疑念もあったが、AIの色付け技術と子どものわくわくしている表情を多くの人に見てもらいたい。
 6月4日、写真提供者の承諾を得て、ツイッターとフェイスブックで写真を紹介することにした。


 100近くのいいねが付く中で、なんと本物のケロヨンから返信があった。

 おぉ!!!!
 ツイッターの力に感激。キャラクターから返事がもらえるとは! 興奮気味に、拍手をしながら読み始めた。

 しかし、よく読んでみると、「ケロヨン」と呼んでいた薬局前のオレンジ色のカエルは、ケロヨンではなかった。

 ケロヨンの生みの親は、影絵作家の藤城清治先生。固定ツイートには「ぼくは薬局にいるカエルさんじゃない」と念押しされている。

 私も間違えていたが、かなりの確率で間違えられているのであろう。
 「ケロヨン」だと思い込み、裏を取らずに発信していたことに震え上がる。
 ケロヨン、ごめんなさい!
 
 ケロヨンはこちら。
 

 薬局にいるカエルは実際は、医薬品などを扱う興和株式会社のキャラクターだ。確かに、モノクロ写真をよく見てみると、「店頭カエル」の下に「胃腸に、キャベジンコーワ」と書いてある。
 
 興和によると、店頭カエルは1963年10月に誕生。元々はサービス品としてカエルの指人形を制作したが、大評判となり、「不二家のペコちゃん」をイメージした巨大なカエルが完成したという。1977年には、「ケロちゃんコロちゃん」というキャラクターが生まれた。

 一方のケロヨンは、店頭カエルとよく間違えられるため、興和の「カエル」に詳しくなったという。

 本家の「ケロちゃんコロちゃん」にケロヨンと間違えられることについて、気持ちを聞いたところ、ケロちゃんは「アニメのケロヨン、風呂桶のケロリンと間違えて覚えているおともだちは多いケロ。いつもケロヨンさんがツイッターでみんなに訂正をしてくれていてとっても感謝してるケロ!」と回答があった。

 
 そして、気になるモノクロ写真の店頭カエルの写真を「ケロちゃんコロちゃん」がツイッターで送ってくれた。
 

 本物はやっぱり緑色だった。AIが間違えてオレンジ色だと判断したのだろう。

 今回、使用したAIは、約230万枚の写真を元に学習している。色付けを重ねて分かってきたのは、海や空の自然物の着色は得意な一方、洋服や機械などの人工物については“本当”の色になりにくい傾向があることだ。

 今回の店頭カエルも、AIは色を推定できず、無難なセピア調で色を付けてきたのだろう。
 AIは絶対的なものではない。AIだって間違えることもある。今回、ツイッターでのつながりが、“本当”の色を教えてくれた。

 オレンジ色の店頭カエルについて、コロちゃんはどう思ったのか。
 「不思議な感じがしたコロ! コロちゃんもこんがり日焼けしたらオレンジ色になれるコロ?」
 「コロちゃん、モノクロの写真が見られてなんだかワクワクしちゃったコロ!」
 とコメントを寄せてくれた。

(デジタル部・與那覇里子)