「あなたは女心が分かっていないみたいですね」。若手女性舞踊家から厳しい指摘を受けたことがある。話題にしていたのは玉城朝薫作の組踊「執心鐘入」

▼美少年に執着した女性が鬼と化し、最後は僧の法力で退治される物語だ。ストーリーを知らない人に少しでも関心を持ってもらおうと、芸能面で女を「ストーカー」と表現した事への批判だった

▼男だけでなく、恋した相手に追いすがる女側からも作品を見た方がいい。彼女はそう続けた。9日、国立劇場おきなわで上演された「執心鐘入」を見て、その意味が理解できた

▼演出は佐藤太圭子さんで、立方も歌三線も全員女性で構成した。演技と歌の相乗効果で、かなわぬ恋を追い、自分を見失うほど傷ついた女性の切ない心がにじみ出た

▼佐藤さんや同時上演された「手水の縁」演出の古謝弘子さんら、多くの女性舞踊家が沖縄戦後の伝統組踊復興の一翼を担っていた。だが国の重要無形文化財となった1972年以降、女性は出演できなくなった。琉球王国時代の伝統を尊重し、演じ手を男性に限定したからだ

▼2019年は組踊初演から300年の節目で、先月31日には記念事業実行委員会も発足した。委員会は組踊の未来を創造するために、女性実演家の意見も聞いてはどうだろう。舞台に新しい生命力を吹き込むヒントがあるはずだ。(玉城淳)