新基地阻止へ 時期が焦点

 翁長雄志沖縄県知事の1期目の任期が10日、残り半年となった。県政運営の柱に掲げてきた名護市辺野古の新基地建設阻止に向け、「任期内に埋め立て承認を撤回する」と公言しており、その時期が焦点となる。2期目への立候補は明らかにしておらず、知事はいくつもの決断を迫られる。

退院後に会見する翁長雄志知事。公務を制限しながら療養を続けている=5月15日、県庁

県の埋め立て承認撤回を巡る主な問題点

辺野古新基地の護岸整備の実施状況

新基地建設が進むキャンプ・シュワブ沿岸。「K4」護岸では、海域を護岸で囲む工事が着々と進んでいる=5月15日(小型無人機で撮影)

退院後に会見する翁長雄志知事。公務を制限しながら療養を続けている=5月15日、県庁 県の埋め立て承認撤回を巡る主な問題点 辺野古新基地の護岸整備の実施状況 新基地建設が進むキャンプ・シュワブ沿岸。「K4」護岸では、海域を護岸で囲む工事が着々と進んでいる=5月15日(小型無人機で撮影)

 翁長知事は4月21日に膵(すい)がんの手術を受け、5月15日の退院後も公務を制限しながら、療養を続けている。

 12日開会予定の6月県議会では全日程に出席する方針のほか、23日の沖縄全戦没者追悼式への出席にも強い意欲を見せる。関係者は「承認撤回や知事選への対応の判断は、6月議会の後になるのでは」との見通しを示す。

 新基地建設で、沖縄防衛局は海の一部を護岸で囲んだ後、8月上旬から中旬に、埋め立て土砂を投入する計画だ。知事はその前に承認を撤回するか、どうかを見極めることになる。

 承認を撤回するには事業者の沖縄防衛局に意見を聞く手続きが必要で、2015年10月の埋め立て承認取り消しの際には、知事の表明から29日後、防衛局への聴聞通知から15日後に正式に取り消した。知事の任期は12月9日までで、11月予定の知事選を視野に入れると、9月中には撤回を決断し、手続きを始めなければならない。

 知事選では、県政与党や労働組合などの調整会議が、知事の再選立候補を前提に議論を進めている。11日の6月議会前の意見交換会で、与党県議が退院後の知事と初面談する予定で、調整会議は知事の病状を把握しながら、立候補要請の時期を判断することになる。

【3つの理由】8月土砂投入控え作業

 翁長知事は名護市辺野古の新基地建設阻止に向け、県議会や市民団体との集会などさまざまな場面で任期中の埋め立て承認撤回を明言している。知事は今年4月に膵(すい)がんの手術で入院したが、県庁内では撤回に向けた作業が進められてきた。県が撤回の要件として検討する問題点は大きく分けて「環境保全の不備」「設計変更の必要性」「承認の際の留意事項への違反」の3分野がある。

 環境保全では、辺野古側の埋め立て区域で見つかった環境省のレッドリスト記載の「オキナワハマサンゴ」の移植を巡る県と沖縄防衛局の攻防がある。県が食害対策が不十分として移植に必要な特別採捕許可を出さない中で、防衛局は護岸整備を進めている。県は工事による生息環境への影響を撤回理由の一つとして検討する。

 このほか環境面では、海上から資材を運搬する際にジュゴンの環境保全措置が不十分なことや、海草藻類の移植が実施されていないことも問題視している。

 設計変更については、防衛局のボーリング調査で明らかとなった軟弱地盤への未対応を指摘する。埋め立て計画を変更する場合は知事への変更申請が必要となるが、防衛局が軟弱地盤を把握しているにもかかわらず地盤改良などの計画変更の申請を出していないと指摘する。

 また、当初の計画で埋め立ては大浦湾側としていたが、辺野古側の埋め立てを先に進めようとすることも知事の承認を受けていない点で不備と主張する。

 留意事項は、前知事が埋め立てを承認する際の条件として付された。県は留意事項に盛り込まれた事業着手前の県との事前協議がないことや、護岸として計画していたはずの工作物を桟橋として使用し、海上から資材を搬入する変更手続きを実施していないことを違反としている。

 県はこうした問題点を法律や環境の専門家の意見を踏まえ、撤回要件を積み上げる作業を進める。県幹部は「必要があればいつでも撤回をする」としており、8月に迫る土砂投入を見据えながら、翁長知事が撤回の政治判断を下す。

【環境保護】高波で外海汚濁の懸念

 沖縄防衛局が8月にも名護市辺野古の海に埋め立て土砂を投入するという報道に、市民団体から疑問の声が上がっている。「事前協議が済んでいない」「護岸がまだ低く、投入した土砂が流れ出す可能性がある」「希少なサンゴが移植されていない」などと多くの懸念を示す。

 仲井真弘多前知事が埋め立てを承認した際の留意事項では、実施設計に基づく県との事前協議を求めている。平和市民連絡会のメンバーで、土木技師の北上田毅さんは「防衛局と県との事前協議は護岸工事にとどまり、埋め立て工事の事前協議はまだなされていない。辺野古側からの埋め立て工事は施工順序の変更で、留意事項に基づき知事の承認が必要」と指摘する。

 防衛局はすでに完成した「N5」「N3」と呼ばれる護岸と、整備中の「K4」がつながれば、辺野古沿岸の「埋め立て区域(2)-1」を囲い込み、土砂を投入する計画だ。北上田さんによると、「K4」は中央部に捨て石を置き、その両側をブロックで覆う下部工が施工されているだけで、現時点で最終の高さよりも6メートルほど低い。

 北上田さんは「この高さで土砂を投入すれば、台風などの高波が護岸を越え、内側の土砂が外海に流出する」と汚濁を危惧する。

 また那覇空港の第2滑走路埋め立て事業も同じ護岸だが、護岸の内側にフィルター層としての海砂を詰め、汚濁の流出を防止している。辺野古ではその措置を講じておらず、環境保全策が不十分と問題視する。

 また、防衛局は埋め立て区域で見つかった希少なサンゴを移植せずに護岸工事を進めてきた。北上田さんは「埋め立て承認の際の環境保全措置の変更に当たる。知事の変更承認を得なければ工事を強行してはいけない」と批判している。

【11月知事選】健康不安 出馬見通せず

 11月に予定される知事選に向け、翁長知事を支える県政与党や労働団体、企業などは、再選に向け動きだしている。ただ、膵(すい)がんの手術を受けた翁長知事は現在も抗がん剤治療中で、健康面から2期目立候補への可否は見通せない状況だ。

 与党などは知事再選を目指して調整会議(照屋大河議長)を立ち上げ、2期目へ向け政策策定や立候補要請時期などの検討を始めている。

 一方、金秀、かりゆし両グループが県民投票への考え方の違いなどを理由にオール沖縄会議から相次いで離脱。与党会派の「おきなわ」が企業や保守中道議員の受け皿となる「翁長雄志知事を支える政治経済懇和会」を立ち上げ、調整会議とのブリッジ共闘で知事再選を目指す構えだ。

 いずれも大前提は知事の再度の立候補だが、可否は現段階で不透明だ。与党は12日に開会する6月議会で翁長知事の再選への意欲を引き出したい考えだが、知事側近は「全ては6月議会後だ」と語り、知事の判断は7月以降になるとの見方を示す。19日からは代表質問や慰霊の日式典など公務が続いており、知事が全日程をこなせるかにも注目が集まる。

 一方、県政奪還を狙う自民党は公明、維新との「勝利の方程式」を念頭に、人選作業を進めている。副知事経験者や現職首長など4、5人が有力候補として挙がっており、候補者選考委員会が水面下で接触し、出馬の意思などを確認している。当初、5月中を目指していた候補者選定はずれ込み、最終的な決定は7月ごろになる見通しだ。