日米地位協定に伴う刑事特別法(刑特法)違反の疑いで、第11管区海上保安本部に1日緊急逮捕され、送検された芥川賞作家の目取真俊さん(55)が2日夜、釈放された。

 米軍キャンプ・シュワブ周辺の米軍提供水域内に許可なく入った疑いが持たれていた。身柄を拘束したのは米軍の日本人警備員である。海上抗議行動で身柄を拘束される人が出るのは初めてだった。

 米軍は、11管が逮捕する前に、8時間にわたって身柄を拘束。身柄を速やかに日本の捜査当局に引き渡さなければならない定めがあるのになぜ、これほど長時間にわたって拘束したのか。目取真さん側の弁護士は「違法な逮捕監禁罪に該当する」と米軍を強く批判している。

 海上抗議行動をしているカヌー隊によると、立ち入り制限を示すフロート内に入ろうとしたメンバーを米軍警備員が拘束しようとしたため、フロート内にいた目取真さんが止めようとして拘束された。

 現場は海岸近くの水深が膝より下の浅瀬で、海上抗議行動をする際はいつもここから入っている場所だ。米軍警備員は通常は海岸に1人しかおらず、カヌー隊に近づいてくることはなかった。この日は数人おり、1人はカメラを回していたという。

 目取真さんは容疑自体は認めている。ただこれまで何度も同様のことをしており、なぜ今回だけ身柄を拘束されたのか。米軍警備員は目取真さんの本名を呼んだといい、狙いすました疑いが強い。

 弁護士は「基地に反対する人へのみせしめのような弾圧だ」と断じている。

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 目取真さん側の弁護士によると、米軍内に拘束されている間、目取真さんは何度も弁護士を呼ぶよう求めたが、拒否された。ウエットスーツのまま着替えもさせなかった。

 11管など日本側の対応も疑問だ。米軍に拘束されてから弁護士が11管、県警、沖縄防衛局に所在を確認したが、いずれも最終的には「分からない」との回答を繰り返した。

 基地内に自国民が拘束されながら、日本の捜査機関などが、その所在を分からない、と返答する。基地内で人権が侵害されることにつながりかねないのに、である。

 福岡高裁那覇支部が提示した和解勧告案を県と国が受け入れた3月以降、カヌー隊がフロート内で抗議行動をしても、海上保安庁は遠巻きに見ているだけで、防衛省は警告を発するにとどめていた。海保はそれ以前は拘束してもすぐ釈放する方法をとっていた。それだけに今回の身柄拘束には多くの疑念が募る。

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 県と政府の和解合意によって新基地建設に関連する工事は全面的にストップしている。翁長雄志知事が前知事の埋め立て承認を取り消した時点に戻っているのである。本来ならフロートも撤去してしかるべきなのだ。

 和解条項の中には、国と県が「円満解決に向けた協議を行う」ことが盛り込まれている。日米首脳会談で安倍晋三首相が「辺野古が唯一」と言明したのは和解条項に反する。米軍も和解条項を妨げるような行動をとってはならない。