「『喜びが爆発した』って何?」「『最強メンバー』って書いてるけど本当?」-。運動部では原稿を書く記者とチェックするデスクとの間で、こんなやりとりが日常的にある

▼一般記事と比べ、スポーツ記事は過剰で勇ましい表現を使いがちだ。例えば「力尽きる」という言葉。「持てる力を全て出し切る」ような試合はめったにないはずだが、使用頻度は高い

▼高校野球の県春季大会で、豊見城高校が準優勝した。翁長宏和投手は昨春準決勝でサヨナラ負けした時、「力尽きた」と書かれた本紙記事を読み、「もう簡単には力尽きないぞ」と下半身を鍛え抜いたという(2日付本紙)

▼記事を発奮材料に変えた翁長投手の感性はすごい。でも、私たちがどのくらい吟味して「力尽きた」を選んだのか、考えさせられた

▼スポーツは、偏狭なナショナリズムと対立をあおる危険性をはらむ。だからこそスポーツ記者は使う言葉に敏感でなければいけないが「○○軍」「初陣」「凱旋(がいせん)」など、戦争用語まで氾濫しているのが実情だ

▼限られた紙面で、短く言える表現はありがたい。「死」「殺」が頻繁に使われる野球記事用語を全部片仮名に言い換えるのはスペース的に難しい。それでも、使う言葉に意識的でありたい。ここぞの場面の好プレーをしっかり見て取材すれば、陳腐なフレーズの入る隙間はない。(磯野直)