沖縄タイムスのネットアンケートには、待機児童の解消に「保育園の義務教育化」「行政の積極的なサポート」などの提案が寄せられた。景気拡大を背景にさらなる待機児童の増加が予想される中、有識者からは企業内保育園の設置、保育特区を設ける構想などの解決策が挙がっている。(デジタル部・與那覇里子)

待機児童をもつ保護者が連日詰めかける那覇市役所

2015年度待機児童年齢別割合

待機児童をもつ保護者が連日詰めかける那覇市役所 2015年度待機児童年齢別割合

 待機児童率は、児童の年齢によって波がある。2015年度、0歳児が8%だったのに対し、1歳児で45・3%、2歳児で29・6%に跳ね上がった。認可園に入園している1歳児は7055人で0歳児の約2倍だが、1、2歳で極端に足りていない。

 県の待機児童対策班の佐和田勇班長は「育休を終えて仕事に復帰する保護者が殺到するのが1、2歳」と指摘。那覇市の担当者に対応策を聞くと「保育士確保が厳しく、園側に1歳児の定員を増やす方向でお願いするしかない」との説明にとどまった。

 県は0~2歳児に対して保育士と無資格者が複数で担当できるなどの独自策を検討。0~2歳を受け入れることができる小規模保育事業所を拡大していく考えだ。

 保育士の給与はどうなるのか。国は15年度、人事院勧告で給与を1・9%アップした。現在は、約2%引き上げることを検討中だ。県は一括交付金を活用して独自に、保育士1人当たりに月額数千~1万円と賞与を補助する。しかし、3年後、園側が引き続き給与を維持できなければ補助金を返還する条件付きで、園の“体力”次第となっている。保育士の給与が大きく変わるまでには至らない。

 県は17年度までに年間2300人の保育士確保を目指すが、入園を希望する児童は毎年約1千人ほど増え、毎年、受け皿は足りず、これまで待機児童が解消されたことはない。

 りゅうぎん総合研究所調査研究部長の久高豊さんは待機児童問題を経済的な側面から研究している。「今後も入園希望者は予想以上に増えていく」と指摘する。背景には、高水準の沖縄振興予算と円安に支えられた好調な沖縄の景気があるという。

 ことし2月の新規求人数と有効求人倍率は過去最高で、県は16年度に1人当たりの所得が4%増と予測。15年は女性の完全失業率が4%前後で推移し、男性より1ポイント以上低かった。久高さんは「以前に比べて求人も賃金も増え、働くことを諦めていた女性たちが社会に出ている。好景気のしわ寄せが保育園不足にいってしまった」と分析する。

 景気拡大は、保育士不足も招いている。好待遇の職が増え、待遇の悪い保育士から転職できる選択肢が広がったことが要因だ。

 では、どうしたら解決できるのか。久高さんは一つに企業内保育園の設置を企業に促す策を挙げる。「今こそ、民間の力を使うべきだ。企業内保育園には外からも積極的に児童を受け入れるようにすべきだ」と提案。

 さらに、沖縄に保育特区を設け、保育園を義務教育にする構想を挙げる。「好景気の今、売り上げ増で国内総生産(GDP)が拡大すれば、増えた税収で保育園をつくることができ、人手不足の解消につながる。保育士の待遇も上がる。不可能ではない」と提言する。

 男性も女性も社会で活躍するためには、手厚い保育は不可欠だ。全国で2番目に多い待機児童を解消するためには、行政、企業、県民全体の取り組みが必要になる。(「待機児童」編おわり)