私らしく、はたらく(23) 吉戸三貴

 事実は変えられなくても、受け止め方は変えることができる。そのことに気付いたのは、パリの語学学校に通っていた時でした。

 テストの結果を見てため息をついていたら、クラスメートのパブロが話しかけてきました。「ミキ、俺、天才かもしれない! 点数が良すぎるんだ~」とご機嫌です。「いいなぁ。こっちは全然ダメ」と肩を落とす私。すると、その様子を見ていた先生が不思議そうに言いました。「おかしいわね。あなたたち二人とも75点よ!」

 まったく同じ点数を見て、ポジティブ思考のパブロは「こんなに正解するなんてすごい。あと少し頑張れば満点じゃないか」と喜び、後ろ向きな私は「あーあ、4分の1も間違ってしまった」と落ち込んでいたのです。物事のどの部分を見るかによって、ひとつの事実がまったく違ったものに感じられるというのは、勉強だけではなく仕事にも言えることだと思います。

 たとえば、会議で提案したアイデアが採用されなかった場合。事実は「会議に出席し、案を出したが不採用だった」ですが、それをどう受け止めるかは本人次第です。却下された、評価してもらえなかったとクヨクヨする人もいれば、今回はたまたま選ばれなかっただけで、積極的に参加して存在感を示せたことに意味があると考える人もいるでしょう。

 最初は、「パブロみたいに楽観的になるのは無理!」と思っていましたが、何度も同じような経験をするうち、少しずつ物事の良い面に目を向けられるようになってきました。「雨の日の通勤、嫌だなぁ。『でも』肌が潤うからいいか」「あーあ、企画コンペで負けちゃった。『だけど』最終選考まで残れたし、この経験を次にいかそう」など、マイナスに感じられることが起きても、発想を転換して前向きにとらえ直せるようになったのです。今では、周囲の人から「吉戸さんって、ホント前向きだよね!」と言われるようになりました。

 すべてが完璧な職場を見つけるのは難しくても、事実の受け止め方は変えることができます。働くなかで、嫌なことやつらいことが起きたら、一度立ち止まって、どこかに良い点がないか探してみませんか。習慣にできると、毎日の仕事が少し楽しくなるかもしれません。(コミュニケーションスタイリスト)