自民、公明両党は4日、返済する必要がない「給付型奨学金」の創設などを盛り込んだ提言を安倍晋三首相に提出した。貧困のため大学進学が困難な家庭の子どもを念頭に教育格差を是正する考えだ。

 馳浩文部科学相は5日の記者会見で、まずは「無利子奨学金の流れを加速させた方が、より多くの学生を救える」との意向を示した。

 大学卒業後の所得に応じて月々の返済額に柔軟性を持たせる「所得連動返還型奨学金」が2017年度から導入される。無利子奨学金で導入するもので馳氏の発言はその延長線上にあるとみられる。

 だが、無利子奨学金の拡大では解決にならない。無利子であっても「借金」を抱えることに変わりはないからだ。

 日本では国費を充てた奨学金は有利子と無利子の「貸与型奨学金」しかない。

 学費の高騰と家計収入の減少で大学生の2人に1人が奨学金を受けているのが現状だ。日本学生支援機構によると、14年度の貸与実績は無利子が約46万2千人、利子付きが約87万4千人で有利子が約65%と多い。同年度に奨学金の返済が滞ったのは約32万8千人、期限を過ぎた未返済額は約898億円に上る。

 奨学金の返済は大学卒業後、安定した職業に就くことを前提にしている。だが、卒業しても、非正規労働者を選択せざるを得なかったり、低収入のアルバイトで生活しなければならなかったりする若者は珍しくない。

 そんな状況で卒業と同時に数百万円の負債を抱え、月々の返済が重くのしかかってくるのである。学業を助けるはずの奨学金が卒業後の足かせになっては本末転倒だ。

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 返済は厳しく、結婚や出産にも影響を与えている。

 労働者の福祉問題に関わる「労働者福祉中央協議会」が奨学金を借りている34歳以下の働く男女を対象に、15年に公表した調査がある。

 1人当たりの借入総額は平均約312万9千円で、毎月の返済額は平均約1万7千円。奨学金の返還を「苦しい」と感じている正規労働者は36・8%、非正規労働者では56・0%と半数を超える。

 「奨学金返還が結婚に影響している」と答えた人は31・6%。500万円以上借りた正規労働者で50・0%、200万円以上借りた非正規労働者で48・5%に上る。

 出産への影響も21・0%が「ある」と答えている。

 給付型奨学金は地方の方が先行している。沖縄県も17年度に県外大学に進学する県出身者を経済的に支援するため給付型奨学金を創設。本年度から募集を始める。

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 経済協力開発機構(OECD)加盟の先進国で国の制度として給付型奨学金が整備されていないのは日本と北欧のアイスランドだけである。

 民進党や共産党などは給付型奨学金をすでに政策として掲げている。自公の提言は、夏の参院選から選挙権を得ることになる18歳以上の若者をにらんだとみられる。

 選挙向けのアドバルーンであってはならない。先進国の中でも立ち遅れている給付型奨学金の創設を急ぐべきだ。