「世界でいちばん貧しい大統領」として知られる南米・ウルグアイのホセ・ムヒカ前大統領が初来日している。引退した海外の指導者の来日が、これほど注目を集めるのも珍しいだろう

 ▼一躍、有名になったのは、大統領在任中にブラジルで開かれた「国連持続可能な開発会議」での演説であった。伝説のスピーチは、ネットを通じて世界に拡散し、反響を呼んだ

 ▼「見直すべきは私たちの生き方」「貧しい人とは無限の欲があり、いくら持っていても満足しない人」。いき過ぎた資本主義、大量消費社会を批判し、本当に求める幸せとは何かを問い掛けた

 ▼来日しての会見でも、貧困や格差の問題から、戦争、テロ、環境問題と幅広く持論を展開した。「私たちは今、幸せに生きているのだろうか」。来し方、行き末について、一度とどまって考えてみようとの提案が胸に響く

 ▼在任中、公邸には住まず、給料の9割を慈善団体に寄付していた。清貧な指導者の姿が愛されたのだろう。「質素な生活は自分のやりたいことをする時間が増える。それが自由だ」と語っていた

 ▼ムヒカ氏のような生き方をする覚悟を誰もが持てるわけではないだろう。覚悟をしたとして、それを貫き通すことが、幸せなのか否かも決めつけられない。それでも、覚悟を実践している人の姿がまぶしく見える。(宮城栄作)