世界中で大ヒットしたディズニーのアニメ映画「アナと雪の女王」や「塔の上のラプンツェル」の主要なキャラクターを、日本人がデザインしたことはあまり知られていない。そのコンピューター・グラフィック(CG)アーティスト、糸数弘樹さん(53)は、久米島の生まれだ。

「久米島に帰ってのんびりCGを教えたい」と話す糸数さん

 中学の美術教師を目指し琉球大学の美術工芸科に進学。在学中に工業デザインへの興味が芽生え、その分野ではトップといわれる大学、ロサンゼルス郊外にあるアートセンター・カレッジ・オブ・デザインへの留学を志望するようになった。入学条件となるTOEFLのスコアを上げるために、ルイジアナやアラバマの教育機関で英語を学んだが、2年かけても必要なスコアに達しなかった。

 3年目にはロサンゼルスのすし屋でアルバイトをしながらTOEFL対策に独学で取り組んだ。留学費用も底を突きかけた時、深夜のラスベガスで試したスロットマシンで2万ドルを当てた。当時の日本円で約300万円。「これで学費を稼げた、と思った」。結果的にTOEFLのスコアも達成し、憧れの大学に入学。卒業後は必修科目として履修したCGの仕事に就くため、1993年に見習いとしてワーナー・ブラザーズに入社した。

 ところが当時の映画界のCGアーティストはまだ少数で、全てが手探り状態。夜12時近くまで会社に残って勉強したかいもあり、半年後には正社員となった。映画「バットマン」シリーズではテクニカルディレクターやリードモデラーという肩書で、バットマンがビルから飛び降りるシーンやゴッサムシティーを構成する建物全体のCGを手掛けた。

 ワーナー・ブラザーズのデジタルエフェクト部門が閉鎖された後に、友人の誘いでディズニーに移籍。そこで「塔の上のラプンツェル」「アナと雪の女王」など大ヒット映画のキャラクターを手掛けることになる。「アナと雪の女王」は長編アニメーション部門でアカデミー賞を受賞した。

 「『アカデミー賞作品に携わってすごい』と言われるたびに『いえ、大したことではない』と答えていた。でもその答えは子どもの夢を壊すのではないか、と考えるようになった。最近は自分が頑張った成果だ、誇らしいと素直に表現するようにしている」

 ディズニーは2014年末で退職。現在の肩書はCGオンラインスクールの校長だ。コンピューターとネット環境があれば、どこにいても教えることができる。だが自分の専門さえ把握していればよかったディズニー時代と違い、今は学生から飛んでくる質問に答えるために、広範な知識を身に付けておく必要がある。これまでになく勉強に時間を費やしているという。

 今の夢は「(久米)島に帰って、のんびり生活しながらオンラインでCGを教えたい。夏休みになったら受講生を島に集めて研修合宿を開いたりもしたい。今すぐにでも実行したいが、4人の子どもの一番下はまだ中学生。その夢はしばらく先になりそうだ」と話した。(ロサンゼルス通信員 福田恵子)