阪神淡路大震災、東日本大震災の経験などから、防災や災害発生時の避難所生活、震災復興などに女性の声を取り入れる重要性が指摘されている。沖縄県内で防災活動に取り組む女性たちを紹介し、女性の視点で防災を考える。

県消防職員協議会女性連絡会の防災教育。服に火がついたことを想定し、転がって消す練習をする子どもたち=2015年7月、北中城村・島袋小学校(安里さん提供)

「災害時に地域の人が自分で考えて行動できるような輪を広げたい」と話す安里由美子さん=7日午後、嘉手納町・ニライ消防本部嘉手納消防署

女性の視点で防災について語る渡嘉敷洋美さん(右)と上原貴子さん=5日、那覇市役所

防災ガールが運営を支援している三重県鈴鹿市の自主防災コミュニティー(防災ガール提供)

城間幹子市長(中央)に防災タウンページを手渡す防災ガールの田中美咲さん=1月12日、那覇市役所

支援物資の衣類が被災した女性たちに配布されている避難所の様子=2011年5月、仙台市内(相馬さん撮影)

「防災には女性の視点が必要」と訴える相馬直子さん

県消防職員協議会女性連絡会の防災教育。服に火がついたことを想定し、転がって消す練習をする子どもたち=2015年7月、北中城村・島袋小学校(安里さん提供) 「災害時に地域の人が自分で考えて行動できるような輪を広げたい」と話す安里由美子さん=7日午後、嘉手納町・ニライ消防本部嘉手納消防署 女性の視点で防災について語る渡嘉敷洋美さん(右)と上原貴子さん=5日、那覇市役所 防災ガールが運営を支援している三重県鈴鹿市の自主防災コミュニティー(防災ガール提供) 城間幹子市長(中央)に防災タウンページを手渡す防災ガールの田中美咲さん=1月12日、那覇市役所 支援物資の衣類が被災した女性たちに配布されている避難所の様子=2011年5月、仙台市内(相馬さん撮影) 「防災には女性の視点が必要」と訴える相馬直子さん

■消防士、子らに防災教育 ニライ消防の安里由美子さん

 2001年に第1号が誕生した県内の女性消防士。今では半分以上の消防本部に採用され、その数は24人に増えた。体力勝負の男性職場とみられがちな救命の現場だが、女性ならではの視点や気配り、相手に与える安心感など期待される役割は多い。県内の消防士全体に占める女性の割合は1・5%とまだまだ少ないが、自治体を超えたネットワークで取り組む子どもへの防災教育など、存在感をめきめきと発揮している。

 「子どもや高齢者に対しても柔らかく、優しく対応できる。救急搬送される方だけではなく、家族への配慮も女性ならではと思う」。ニライ消防本部の安里由美子さん(39)は県内女性消防士の草分け的存在の一人。02年に“2期生”として採用され15年目になる。

 女性消防士が少なかった03年。当時6人いた仲間と共に交流の場「女組(めぐみ)」を立ち上げた。その輪は徐々に広がり、5年前に県消防職員協議会の女性連絡会(宮城美奈子会長)へ。近年は子どもへの防災教育に力を入れている。災害が起きたときに、地域の人が自らの考えで行動できる力を培ってほしいと願う「女性の立場での社会貢献」だ。

 吸収力の高い子どもをターゲットに、防災の力を身に付けてもらおうと、非番のメンバーが依頼に応じて保育園や小学校に出向く。時には母親も巻き込み、地域防災の輪を広げる地道な活動を続けている。

 当初は女性だけの取り組みだったが、昨年は宜野湾市消防本部の男性消防士も加わった。安里さんは「男性が自ら取り組んでくれ、輪が広がったのはうれしかった」と振り返る。先駆的な取り組みを参考にしようと九州地区の女性消防士が視察にも訪れたという。

 現在、消防本部は県内に18カ所。女性消防士が不在だった国頭地区とうるま市にも今春、採用され、これで女性消防士がいるのは10消防本部と過半数に達した。第1号の誕生から15年。沖縄本島全域や石垣市、久米島など離島にも仲間が広がった。

 連絡会の役割は当初の親睦にとどまらず、地域貢献へと大きく広がっている。安里さんは「女性の役割を生かして、地域の防災に還元することが一番の目標。これからも何ができるかを考えていきたい」と目を輝かせて話した。(中部報道部・溝井洋輔)

■大震災体験基に声反映 那覇市防災対策チーム・渡嘉敷洋美さんと上原貴子さん

 東日本大震災の体験などを基に女性の視点を取り入れた防災対策を進めようと、那覇市では2014年5月から市の女性職員ら約10人で市防災対策検討女性チームを設置している。15年1月には、避難者名簿の見直しのほか避難所運営マニュアルの整備、災害用トイレの整備など三つの提言を市防災対策推進会議に報告した。市に限らず、大規模災害発生時に現場を仕切るのは男性が多くなるのが現状。サブリーダーで、なはまちなか振興課の渡嘉敷洋美さん(41)は「女性のニーズを市の防災対策の中に反映させていくことが大切だ」と主張する。

 「避難所で、支援物資をなかなか受け取りに来ない女性がいました。どういう状況だったか想像できますか?」。メンバーの一人、市街地整備課の上原貴子さん(39)が男性記者に問い掛ける。東日本大震災の避難所であった事例で、男性ボランティアが生理用品や下着を配布したため、女性が受け取りづらかったという。また支援物資の中で優先度が低いとされる化粧品だが「普段から身だしなみに気を使う女性の中には、化粧できないことが苦痛にもなり、避難が長期化すれば大きなストレスの一因になる」と話す。

 12年4月から1年間、被災地の宮城県多賀城市で下水道の復旧工事に関わった上原さんは、現地の知人から、災害時の女性のニーズ調査をまとめた同県のNPO関係者などを紹介してもらい実際の事例を学んだ。

 上原さんと渡嘉敷さんのチームは避難所の災害用トイレの整備について提言。下水道管路にあるマンホール上に設置するマンホールトイレのほか、安全面やプライバシー面から男女別々の専用トイレを設置すること、男性よりも使用時間がかかることを踏まえて個室数は女性用3、男性用1の割合が望ましい、などと提言した。

 提言を受け、市はマンホールトイレを今の10基から20基まで増やすという。2人は「今後は防災ピクニックやワークショップなど、実践経験を積んでいきたい」と声をそろえた。(社会部・又吉俊充)

■被災地NPOが避難所運営提言

 女性防災リーダー養成などの活動に取り組む宮城県のNPO法人「イコールネット仙台」が2012年にまとめた「男女共同参画の視点からみる防災・災害復興対策に関する提言」では、防災計画を策定する委員会などの場に女性委員を3割以上参加できるようにすること、妊産婦や乳幼児の母親など災害時に困難を抱える当事者の声を反映させるよう求めている。

 また女性の視点を反映させた避難所運営として、(1)男女別の仮設トイレや更衣室、物干しや子どものためのスペース、授乳室や間仕切りの設置(2)女性用物資の確保と女性による配布体制づくり(3)女性や子どもの安全対策として警備体制の整備(4)女性のためのクリニックや助産師の相談窓口を近隣の空間に設置し、安心して相談できる環境をつくること-など9点をまとめている。

■20~30代中心「防災ガール」全国で啓発 沖縄にも呼び掛け

 「防災をもっとオシャレで分かりやすく」をコンセプトに、20~30代の防災意識の高い女性を中心として活動する一般社団法人「防災ガール」(本部・神奈川県)。全国各地で次世代避難訓練の企画や運営、女性のコミュニティー構築、講演会などを通して、生活に防災を取り入れることを提案しているが、県内のメンバーはゼロ。代表の田中美咲さん(27)は「防災意識はどこにいても大切。一緒に活動できたら」と呼び掛けた。

 田中さんは東日本大震災直後に入社したIT会社を1年半で辞め、福島県で被災地支援に携わった。その経験から若者にもっと防災意識を広めたいと、2013年に団体を立ち上げた。ウェブ会議ソフト「スカイプ」などを使い、全国各地に広がるメンバーと情報共有し、防災啓発活動を展開している。

 「防災ガール」の活動の具体例として昨年5月、三重県鈴鹿市の危機管理課と地域の母親が協力して立ち上げた自主防災コミュニティー組織で、運営をサポート。女性や若い世代の目線も取り入れた防災を考え、発信していこうと、行政と連携してさまざまなプログラムを実施している。

 また「防災ガール」のホームページ(HP)には、防災に関する分かりやすいデータや女性の視点で選んだ防災グッズの紹介、活動内容の報告なども掲載している。

 また毎年4月と10月の半年ごとに「もっと防災を広めたい」「被災した経験やボランティア経験を生かしたい」など団体の趣旨に賛同するメンバーを募集(防災ガールのHP参照)。インターネットで参加を呼び掛け、学生や社会人、主婦など、現在は全国に約110人が活動しているが、沖縄県内にメンバーはまだいないという。

 田中さんは「日本は災害大国。どこに暮らしていても災害に対する意識を持つことが大切。特に若い人が意識を高めて、一緒にアクションを起こせたら」と話し、沖縄からの参加を呼び掛けた。(社会部・吉川毅)

■緊急対応・避難所など紹介 那覇市に「防災タウンページ」

 「防災ガール」とNTTタウンページは共同で「防災タウンページ」を発行している。今年1月には、那覇市に市版の別冊防災タウンページを贈呈。市内のほとんどの住宅や事業所に配布している。県内では宜野湾市と浦添市版も発行している。

 防災タウンページでは、東日本大震災の被災者の体験談などを交えながら、災害への備えや情報収集の方法などを紹介。災害時の緊急対応や防災対策などを記載しているほか、市内の地図を拡大し、公衆電話や津波避難ビルなどの場所を示している。

■避難生活 弱者に寄り添う 「週刊ほ~むぷらざ」記者・相馬直子さんに聞く

 「週刊ほ~むぷらざ」の記者として取材する傍ら、県内における防災の取り組みを取材し、被災地でのボランティア活動を続けている。その中で、防災に「女性の視点」が欠かせないことを知った。避難時の持ち出し品や支援物資、避難所での暮らし方など、女性と男性とでは必要なものが異なるケースがあるのだ。

 東日本大震災の被災者を取材したとき、仙台市在住の30代の女性は「支援物資に入っていたハンドクリームをつけたときに涙が出た」と語った。「感染症を防ぐため避難所では消毒が徹底され、アルコールで荒れた手をケアできることが本当にうれしかった」との体験談は印象的だった。

 被災直後は考える余裕がなくても、少し状況が落ち着いてくると徐々に自分自身のことが気になってくる。自身をいたわることで、心の回復や日常を取り戻していくことにつながるのではないだろうか。

 被災後のニーズは人それぞれで、個別での対応が求められる。支援ですべてをカバーすることには限度がある。だからこそ、自分にとって必要なものをイメージし、最低限度のものを備えておくことが大切だ。ちなみに私の非常用バッグには生理用品や汗拭きシート、除菌シート、リップクリーム、鎮痛剤、目薬、めがねなどが入っている。

 昨年3月、仙台市で行われた国連防災会議に参加した。シンポジウムでパネリストとして参加した避難所の女性リーダーは、避難してきた女性たちの声を積極的に聞いてきたと報告。「男性リーダーに言えないことも女性のリーダーだから話せる」と指摘していた。

 避難生活を送る上で欠かせないのは、心配りや柔軟性。過酷な状況の中、暮らしを少しでも改善させるためには必要不可欠だ。女性や子どもに限らず、高齢者や障がい者ら、社会的弱者と呼ばれる人も同様だ。たとえ困っていても、なかなか声を上げにくい彼ら、彼女らのニーズにも耳を傾けることは必須だ。

 だが男性社会の中で女性が前面に出るには厳しい状況や傾向もある。非常時には臆せず前に出て、助けを求める声に耳を傾けることができれば、励まし、助け合うことにもつながり、すばやい復旧・復興にもつながるはずだ。

 災害時の備えと共に、普段から「自分にできる何か」を考えてほしい。それがきっと、いざという時に役立つ。そう思う。

■女性団員増やし防災活動 沖縄市消防団長・久高清美さん

 県内で女性初の消防団長となった沖縄市の久高清美さん(58)は「女性の視点を取り入れた活動にしたい」と意気込む。「女性は子どもを育て、家庭を守った経験を持つ者が多い。だからこそ男性とは違う見方で何かできないか」。考えた末に行きついたのが防災教育だった。

 2014年に防災士の資格を取得。「防災・減災研究所沖縄」を立ち上げ、地域住民への防災教育を精力的にこなす。そんな経験も生かし、市内でより防災教育を充実させたいという。

 同市では約50人の消防団員が6地域に分かれて活動し、久高さんを含めて7人の女性たちが活躍している。3年計画で団員を72人に増やし、そのうち女性を20人にする予定だ。

 「住民同士のつながりが深い地域が防災・減災に強い街となる」とした上で、「そのためにも女性団員が地域に飛び込み、子どもやお年寄りを中心に防災教育をしていきたい」と話した。(中部報道部・比嘉太一)