自民党は、「1票の格差」や「合区」問題に対処するため、公職選挙法改正案を国会に提出した。

 国会の会期が7月22日まで延長されたことを受け、今国会での成立をめざす。

 来年夏の参院選に向け制度改革は待ったなしだが、内容といい与野党協議の進め方といい問題が多く、評価できるものではない。

 自民党の参院選挙制度改革案は(1)比例代表の定数を「4増」する(2)議員1人あたりの有権者数が最も多い埼玉選挙区の定数を「2増」する(3)2016年参院選から導入された「鳥取・島根」「徳島・高知」の二つの「合区」は維持する-というものだ。

 これによって参院の定数は現行の242から248に増えることになる。なぜ比例の定数を四つも増やすのか。

 現行の参院選比例区は、候補者の得票数に従って当選者が決まる「非拘束名簿式」を採用している。これに対し自民党案は、「合区」を維持する代わりに、比例代表の名簿の一部に「拘束名簿式」の特別枠を新設する。

 「拘束名簿式」はあらかじめ政党が定めた順位に従って当選者が決まる仕組みだ。

 もともと拘束式だった制度を非拘束式にあらため、今また一部に拘束式を導入しようというのである。

 合区で候補者を出せない県に比例代表の指定席を与え、優先的に当選させる、という発想である。

 党利党略が露骨なうえに、ただでさえ複雑な選挙制度をますます複雑にする内容である。

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 最高裁が13年参院選を「違憲状態」だと判断したことを受け、15年に公選法が改正された。改正法の付則は、来年の参院選までに「選挙制度の抜本的見直しについて必ず結論を得る」と明記している。

 自民党は当初、憲法を改正して「合区」や「1票の格差」に対応する考えだった。だが、改憲による抜本的な対策をめぐっては、野党だけでなく与党の公明党からも異論が出た。

 自民党の見通しの甘さに加え、国会は森友・加計学園問題をめぐって混迷を深め、改憲による選挙制度改革の動きは急速にしぼんだ。

 自民党の改革案は小手先の対応に終始し、抜本的な見直しからは、ほど遠い。

 自民党案には、将来のあるべき参院像が前提にされていない。来年の参院選や秋の自民党総裁選をにらんだ、理念なき改革案というしかない。

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 国会議員を選ぶ選挙制度は民主主義の土台である。選挙制度の見直しは、各党の思惑が入り乱れるため、合意形成を図るのは容易でない。

 だからこそ、法案提出前の丁寧な与野党協議と、国会での時間をかけた審議が必要なのである。

 与党が十分な審議もせず、数の力で改正法案を強行採決するようなことがあれば、大きな禍根を残すことになるだろう。

 来年夏の参院選までに与えられた時間は極めて限られている。各党の隔たりを埋めていくための真剣な努力を与野党双方に求めたい。