野球で一塁手の後ろのベースカバーに走る捕手の姿は、人生にも似た奥行きを感じさせる。ゴロを捕球した内野手の悪送球は1試合に一つもないことが多い。むしろ、ない方がいい

▼それでも万一に備えて全力で走る。カバーがいる安心感で内野手は思いきったプレーができる。送球がそれた場合でも走者の進塁を防げる。徒労ともいえる作業の繰り返しで、仲間からの信頼を得ていく

▼23日に開幕した夏の高校野球沖縄大会。ある試合で二塁手の一塁送球がそれて、打者走者が二塁に進んだ。捕手がベースカバーを怠ったためだ

▼全力プレーとは、最後の打者が砂ぼこりを上げてヘッドスライディングすることではない。力を出すべき局面がどこかに必ずある。一つ一つのプレーの重みを感じつつ、勝負どころをかぎ分ける力がゲームを左右する

▼数年前の夏、最終回にピッチャーゴロを打って走らなかった選手をスタンドの仲間が涙声で怒鳴った場面があった。ベンチ入りできなかった部員たちの無念さがにじんだ。仲間の思いも背負う背番号であることを忘れないでほしい

▼ファインプレーやホームランは狙ってできるものではない。だがベースカバーや全力疾走はできるかできないかでなく、やるかやらないかだ。きっとこの先、人生のさまざまな場面につながっている。(田嶋正雄)