バレエダンサー江上悠は、所属する香港バレエ団で踊り手としてだけでなく、振付師、演出家として舞台をつくりあげている。33歳の今、「バレエとの向き合い方が変わってきた。作り手になることで踊り手として新たな感性を生んでいる」と自身の「現在地」について語る。(学芸部・松田興平)

バレエとの向き合い方について語る江上悠=那覇市・森島富美加バレエ&ジャズダンス教室

 20代のころは、役をつかみ取るための競争心が勝っていたように感じるという。

 だが、演目によって求められることがさまざまで、けがもつきものの世界。ダンサーとしての力は、技術の優劣だけで計れない要素が大きいことに気付いた。

 「自身が表現者として何が大事なのか」を意識するようになった。

 周囲が評する江上の踊りは柔らかさだ。表情だけでなく手足の細やかな表現と視線で感情を豊かに表す。

 中学生のときから振り付けや創作を手掛けるが、プロ集団の中で場数を踏むことが、踊り手としての成長を促す。

 「演出する時は、相手の良さを引き出すことが大事。照明など裏方の人たちの多大な力も身に染みて分かった。舞台をつくることはダンサーとして無駄になることは何一つない」と言い切る。

 10代から海外生活を送っているがホームシックにかかったことはないというほど、充実した日々を送り続ける。「やりたいことをさせてもらっている。一生、踊り続けたい」

■江上と棚原の妖艶なカルメン 森島バレエ発表会

 森島富美加バレエ教室の第21回発表会が2日、浦添市てだこ小ホールであった。「カルメン 第1幕」や「コッペリアよりディヴェルティスマン」などが上演された。

 「カルメン」には同バレエ教室出身で、現在は香港バレエ団に所属する江上悠が出演し、振り付けも担当した。カルメン(棚原千香子)とドン・ホセ(江上)の妖艶な絡みと、ロマたちの陽気な群舞が対照的な構成となった。

 シンプルな黒の衣装に身を包んだ棚原と江上はいすを使ったり、アクロバティックな振りを見せたりと、青と赤を基調とした官能的な照明が映える舞台で、カルメンの世界を凝縮して表現した。

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 えがみ・ゆう 豊見城市出身。16歳から19歳まで英国ロイヤルバレエ学校へ留学。2002年に香港バレエ団へ入団。