職場でのセクハラを含むハラスメント防止へ、初の国際的な基準作りが前進した。

 国連の国際労働機関(ILO)は、スイス・ジュネーブで開いた年次総会で、仕事に関する暴力やハラスメントを防ぐため、拘束力を持つ条約を制定すべきだとする委員会報告を採択した。実効性を担保するため勧告も作成し、条約を補完する。

 ILOは来年の総会で条約制定を目指し、批准すれば、国内法の整備などが義務付けられる。

 ILOは労働の国際基準を定める機関で、日本を含む187カ国の政府・労働者・使用者が参加する。

 ハラスメントについては「身体的、精神的、性的または経済的危害を引き起こす」行為や慣行と定義し、(1)拘束力を伴う条約を制定(2)拘束力のない勧告にとどめる(3)拘束力を伴う条約を勧告で補完-のいずれにするかが議論の争点だった。(3)を選んだ採択は、日本の労働者側の望んだ形であり評価できる。

 一方、条約化について終始、消極姿勢が目立った日本政府は、欧州諸国が条約制定を強く訴える中「(拘束力のない)勧告が望ましい」との態度を崩さなかった。政府代表の牧原秀樹厚生労働副大臣は、演説で安倍晋三政権の働き方改革などをアピールしたものの、ハラスメント問題には触れていない。

 ハラスメントを巡って安倍政権は、福田淳一前財務次官の問題を受けて「現行法令でセクハラ罪という罪は存在しない」とする答弁書を閣議決定している。ILO採択と矛盾する内容で、国際基準へ後ろ向きの姿勢がうかがえ、心配だ。

■    ■

 日本は1919年のILO創設当初から参加し、政府・労働者・使用者それぞれが理事に就任する主要メンバーだ。

 しかしILOの約200の条約のうち日本の批准数は4分の1程度。労働時間や休暇、強制労働の廃止など、労働者の権利にかかわる条約の多くを批准しておらず、国際的に見れば「労働問題の後進国」とのそしりを免れない状況にある。

 今回の議論にあたりILOが実施した80カ国に対する事前調査でも、60カ国がハラスメントを規制する中、日本は規制がない残り20カ国との位置付けだ。

 ハラスメントを全面禁止する条約が成立しても、日本が批准しない恐れもある。

 働く現場でのハラスメントは深刻だ。

 日本労働組合総連合会(連合)が2017年10月に千人に実施した調査で、「職場でハラスメントを受けた・見聞きしたことがある人」は56%に達した。

■    ■

 ハラスメントを受けた33%が「心身に不調をきたし」、21%が「仕事を休み」、18%が「仕事を変えるか辞めた」など被害者の生活に影を落としていることも分かった。

 ハラスメントは人生を大きく左右する重大な人権問題だ。

 国際基準としての条約の成立はもちろん、政府は条約批准に備えてハラスメントを定義し禁ずる国内法の整備を急ぐべきだ。