広島で開かれた先進7カ国(G7)外相会合は、核兵器のない世界に向け環境醸成に取り組むことを盛り込んだ「広島宣言」を採択して閉幕した。

 核廃絶への具体的な成果はなかった。閣僚らが被爆者の生の証言を聞くこともなかった。被爆者や地元の人たちは自分たちの思いが伝わらないことに物足りなさや歯がゆさを感じたかもしれない。

 ロシアがウクライナ南部クリミアの編入を強行したことで米ロが対立し、核軍縮の機運は急速にしぼんだ。北朝鮮の核兵器、ミサイル開発は国連や国際社会の強い反発にもかかわらず、エスカレートするばかりである。

 その一方で、外相会合では次につながる動きもあった。

 原爆を投下した米国の重要閣僚であるケリー国務長官は、他のG7外相とともに広島平和記念資料館を見学し、原爆死没者慰霊碑に献花して犠牲者を追悼した。ケリー氏の提案で急きょ、原爆ドームの視察も実現した。

 米本国での反応を考慮して犠牲者に謝罪するようなことはなかったが、現職の米国務長官が初めて、他の核保有国外相とともに、被爆地を訪れた意義は大きい。

 広島宣言は、政治指導者らの被爆地訪問を促す内容が盛り込まれており、伊勢志摩サミット参加のために来日するオバマ大統領の初訪問が現実味を帯びてきたといえる。  ケリー氏も記者会見で「訪問がいかに大切かを(オバマ氏に)確実に伝えたい」と語っている。機は熟したというべきだろう。

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 オバマ大統領は2009年4月、チェコの首都プラハで演説し、「核兵器のない世界を追求する」ことを宣言した。

 オバマ氏は同時に「核兵器を使ったことのある唯一の核保有国として、行動する道義的責任がある」とも語った。

 ケリー氏の広島での行動がオバマ氏のプラハ演説の趣旨に沿ったものであることはあきらかである。

 オバマ氏はその年、ノーベル平和賞を受賞した。11年にはロシアとの間で、新戦略兵器削減条約(新START)を発効させている。

 ただ、プラハ演説とノーベル平和賞にみあった成果を上げたかというと、そうとは言い切れない。

 オバマ氏が広島を訪問し、被爆者の生の証言にも耳を傾け、世界に向かって演説する。プラハ演説後の核を取り巻く厳しい状況を踏まえ、核廃絶に向けた具体的な取り組みを打ち出すことができれば、「広島演説」は大きな意味を持つことになるはずだ。

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 北朝鮮の核開発に対抗するため韓国では政治家から公然と核保有論が語られるようになった。政府が、依然として世界に蔓延(まんえん)する核抑止力論にすがり、核の傘の下に安住しているだけでは、核廃絶に向けたリーダーシップを発揮することはできない。 

 G7外相会合を広島で開催し、広島宣言を採択したことに満足してはいけない。「核兵器の非人道性」を国際社会に広げ共有していく-その先頭に立って行動することを強く要望する。