帝国書院の高校教科書に盛り込まれた「毎年約3千億円の振興資金」との記述に、識者らは「説明不足で、沖縄だけが優遇されているかのような大きな誤解を招く」と警鐘を鳴らす。

上原良幸さん

池宮城秀正さん

上原良幸さん 池宮城秀正さん

 沖縄関係予算は決して基地の見返りではない。本土復帰を機に、沖縄が抱える「特殊事情」の課題解消を目的に定められた沖縄振興特別措置法(沖振法)を根拠に実施するものだ。

 戦後、約27年間の米軍統治下で日本国憲法は適用されず、医療や教育、交通など生活や産業の面で本土と大きな格差が生まれた。その格差を縮め、離島振興・基地返還跡地利用などを目的に、内閣府の沖縄担当部局が複数の省庁にまたがる予算を総合的に調整し、一括して計上、予算要求している。一方、他の都道府県は、個別に各省庁に予算を要求する仕組みだ。

 県企画調整課によると、2013年度の普通会計決算ベースで沖縄県の国庫支出金は全国11位、地方交付税交付金も含めた国からの財政移転は全国14位で、突出しているわけではない。また人口1人当たりでも国庫支出金と地方交付税の合計額は全国6位。復帰後、一度も全国1位にはなっていない。

■基地とリンクせず 上原良幸さん(元沖縄県副知事)

 米軍基地に関する予算は主に防衛関係費で計上されているのであり、基地と沖縄の振興予算は直接的にリンクしない。

 沖縄振興予算は沖縄振興特措法に基づき、本土との格差是正などのため高率補助等の措置がされてきた。

 一方、振興予算とは別に国からの地方交付税があるが、これは全国共通の尺度で算定されるため沖縄の特殊事情は考慮されにくく、交付額はかなり低い。教科書の記述とは異なる。

 復帰以降の県予算や財政構造は制度改正など実務的な調整を継続すべきで、普天間問題のような政治と絡めて議論すべきではない。

 この問題を契機に、誤解を生みやすい沖縄振興予算の仕組みや中身について、国民の理解が深まればと思う。

■全都道府県に交付 池宮城秀正さん(明治大学教授)

 帝国書院の記述は、非常に大きな誤解を生むと思われる。日本の将来を担う高校生に事実と異なる情報を刷り込むことは、財政にとって大切な「国民の一体感の醸成」などに大きなマイナスになる。だが沖縄関係予算の内容については、専門家の間でも実情が共有されているとは言い難い。「沖縄だけの特別な予算」との印象を受ける報道も多々見受けられ、「3千億円」が一人歩きしている。

 この予算は、すべての都道府県に国から交付されている国庫支出金、国直轄事業費を沖縄県について合計したものであり、沖縄県だけに別枠で計上されている補助金ではない。3千億円の内訳を見れば、全都道府県に交付されている財政資金だと分かるであろう。

 「多額の財政資金を得つつ、一方では基地に反対」といったことが流布するとなれば、沖縄県民の誇りを傷つけるものだ。