1月下旬、熊本城を見学し、威風堂々とした城郭を仰ぎ見た。2カ月半後に熊本を襲った大地震で、城周辺を囲む国重要文化財の長塀は約100メートルにわたって崩れ、天守閣の瓦もはがれ落ちた

▼14日午後9時26分ごろ、熊本県益城町で震度7の地震があり、九州の広範囲で強い揺れを観測した。益城町を中心に家屋倒壊などの被害が相次ぎ、死者は9人、負傷者は約千人に上る。多くの住民が避難所に身を寄せている

▼益城町で、2階が崩れ落ちて1階がつぶれた住宅の寝室から生後8カ月の乳児が必死の作業で救出された。消防団員に抱えられながら、小さな足をばたばたさせる乳児の様子をニュースで見て、心の底からよかったと涙が込み上げてきた

▼その一方で、介護していた90代の母親と一緒に家屋の下敷きになり命を落とした60代の男性がいた。近所でも親孝行と評判だったという。母親を助け出そうとしていたのかもしれない

▼5年前、東日本大震災時に東京で度重なる余震を体験した。緊急地震速報の警報が鳴ると、高まる不安で体が固まった。電車など都市機能は混乱し、地震の怖さを何度も思い知らされた

▼熊本の人々も断続的な強い余震におびえ、眠れない夜を過ごしている。一刻でも早い余震の終息を祈り、行政や関係者を挙げた復旧を願わずにはいられない。(与那原良彦)