「医学部へ行くため、東大を蹴って私立大を選ぶ生徒もいます」。東京で先月あったセミナーで、大手予備校の担当者が語る医学部人気の高まりに驚かされた

▼近年は、私大の入学者数が基準以上に定員を超えると文部科学省の補助金がもらえないため、各大学は定員を厳格化。合格の難易度は軒並み上がっている。それを知っての親心だったのか

▼文科省の前局長が、東京医科大に便宜を図る見返りに息子を合格させてもらったとして逮捕された。今年の同大医学科の一般入試は3535人が受験して合格は214人。16・5倍の狭き門だった

▼贈収賄は金銭の授受が一般的だが、今回は入試の点数を不正に加算することが「賄賂」とされた。明治時代から引き継がれる判例はこう示す。「賄賂は有形・無形を問わず、人の需要・欲望を満たしうる一切の利益を含む」

▼わが子の幸せを願わない親はいない。大学合格という子の利益は、取りも直さず親の利益でもある。だが、それは助成金目当ての大学とエリート官僚の癒着によってもたらされた

▼きっと息子は自力で難関を乗り越えたと信じ、医者への道を歩んでいただろう。事件発覚で残酷な現実を突き付けられた。教育行政を歪(ゆが)めた行為は司法の場で問える。でも、わが子の将来を暗転させた父親としての罪は法律では問えない。(西江昭吾)