「安室奈美恵を語る会」を仕掛けた平賀哲雄氏に聞く(下)

 音楽ライター、1人のファンとして安室奈美恵を追い続けてきた平賀哲雄氏は安室の魅力について、カッコ良さを追求しつつ、シャイで純粋な人間性を挙げる。舞台でのMCを極力せず、全力のパフォーマンスでファンと呼応してきた安室の足跡を語ってもらった。(学芸部・天久仁)

最後のライブツアーで笑顔を見せる安室奈美恵=6月2日、東京ドーム

同ツアーの国内観客動員は75万人を数えた

最後のライブツアーで笑顔を見せる安室奈美恵=6月2日、東京ドーム 同ツアーの国内観客動員は75万人を数えた

 -デビューから25年、変わらずファンから受け入れられてきた理由は何か。

 「この時代の象徴的な人だという気がする。1990年代後半のブレークの後、洋楽志向を追い求めて再び認めさせた。ライブでMCもなく、後半はパーソナルな部分は見えなかったが、その姿勢はライブで見せた。自分の中にある『これ、カッコいいよね』をどんどん追求していく人だった。引退の発表は3度目のムーブメントだと思う」

 -実際に会っての印象は。

 「2005年のアルバム『Queen of Hip-Pop』リリース時。最初はシャイな感じだったが、私自身がファンであり、インタビューできることがうれしいと話すと、わーっとしゃべってくれた。ファッションやパフォーマンスを見てクールな印象を受ける人がいるかもしれないが、それはすごく純粋でシャイだから。(作詞作曲や歌で)コラボレーションしたグループの歌を、リリースタイミングが過ぎても自分のツアーで歌い続けてきた。いろいろなところに優しさや愛情があふれていた」

 -6月3日、東京ドームでの最後のライブを見て。

 「見終えても終わった気がしない感覚があった。引退が発表された時と似ていた。ライブでは(歌った30曲の)あらゆる楽曲を、最後の歌として響かせていた。ラブストーリーをはじめ、歌の持つストーリーが会場にいる5万人との『関係値』として響いた。一つ一つの曲の重みをすごく感じた」

 -その中でも印象に残った場面は。

 「象徴的だったのは『a walk in the park』。1997年、2012年の東京ドーム公演で同じ曲を歌う映像が流された。こんなに長い間、安室奈美恵の歌があり続けたんだと思うと泣けた。走り続けてきた25年間の歴史を感じた」

 -これまで最も印象に残っているライブは。

 「25周年の沖縄ライブ(17年9月17日、宜野湾海浜公園)。『奈美恵コール』や観客が一緒に歌のパートを歌う『シンガロング』で、ファンと安室奈美恵が会話をしている感じがすごくあった。それがラストに歌われた『Hero』だった。『君だけのためのヒーロー』というフレーズを長年追い掛け続けてきたファンは、安室奈美恵がそばにいてくれることだと捉えた。逆に安室にとって、ヒーローはあなたたちファンだよという視点があった。歓声を聞いて安室が喜び、歌い返した。多くのライブを見てきたが、あのようなきれいな光景はほかに思い出せない。みんなが知っている曲でセットリストを組んだのは、沖縄への恩返しだったのだろう」

 -どのような気持ちで9月16日を迎えるか。

 「(ファンの)みんなが終わらせたくないのであれば、終わらせなくていい。希望の話ではないが、安室奈美恵が生きている限り何かがあるかもしれない。ファン同士の会話は終わることがない。ずっと愛して、曲を聴きながら語り合えばいい。引退を悲しい出来事として捉えたくない。安室本人もそう思っているだろう」