「愛」というやつは、目に見えないくせに存在感が強すぎて困る。かのCocco(コッコ)様は「雲路の果て」で「体があなたを知らなければ引きずる思い出もなかった」と歌った。そう、愛の喜びは、常に痛みと表裏一体。なのに我々は懲りずに人を愛し、その不確実さにほんろうされ、滑稽なことを繰り返す。

「ファントム・スレッド」の一場面

 舞台は1950年代ロンドン。英国ファッション界随一の腕を誇る仕立屋・レイノルズは完璧主義者で潔癖症。彼のルールに背くことは許されない。そんな彼を愛するあまり反旗を翻したのが若い新恋人アルマ。レイノルズの食事に死なない程度の毒を混ぜ、「弱ったあなたは従順で可愛(かわ)いいわ」と看病し、慈しむ。

 それはそれで幸せそうに見えてきて、なんだかこの愛し方も間違ってない気がしてくる。そう、愛には正解がない。困る~。(桜坂劇場・下地久美子)

 ◇桜坂劇場で上映中