【熊本県で山城響】熊本市中央区にあるホテル6階の一室。「熊本地震」の取材を終えて眠りについた16日午前1時25分、震度6強の激震が襲った。下から突き上げるような衝撃で分厚いベッドごと、体が宙に浮いた。「ゴゴゴゴー」と、これまで耳にしたことのないごう音の後、6階建ての堅牢(けんろう)なホテルがぐにゃぐにゃ曲がった。経験したことのない大きな揺れに腰が抜け、倒壊しないか恐怖におののく。時間にして十数秒。これ以上揺れ続くと「壁が割れる」と思った。室内にあるテレビやテーブル、持参したパソコンなど全部が吹っ飛び、散乱した。揺れが収まり、一目散に階段を駆け下り屋外へ逃げた。

未明の地震後、ホテルの駐車場に避難した宿泊客ら=16日午前2時半ごろ、熊本市中央区(山城響撮影)

 宿泊客ら約40人は、ホテルの駐車場で身を寄せ合い、朝を待った。数分間隔で押し寄せる余震。「もうやめてくれ」「怖いよ」と声が漏れる。暗闇に、携帯の緊急地震速報が鳴り響く。ホテルのスタッフが宿泊名簿で安否を確認するのを、大きな余震が遮る。揺れる度に、避難所に隣接する民家の壁の亀裂が深まり、屋根が傾く。大きな余震の連続に、14日の地震発生直後から被害の大きかった益城町の状況が心配になった。

 未明の地震から明けた16日昼、再び益城町に入った。倒壊を免れた家屋も、半壊だった店舗も、前日まであったものがめちゃくちゃになっていた。未明の激震は文字通り、「とどめの一発」となった。家屋を補修する人、家財道具を運ぶ人、ただぼうぜんと立ち尽くす人、「住むことを諦めた」と語る人。人々の様子や表情を見ればその家の被害の程度が分かる。

 14日の地震直後から、被害の大きさが目立つ町木山地区。未明の地震で全壊した家屋が増加したという。跡形もなくなった浄土真宗の寺院前で、立ち尽くす66歳の女性は「地域で大切にしてきた立派なお寺を一瞬で失った。自然災害とは言え…」と、言葉を詰まらせた。町宮園の川越ミヨさん(81)も同じようにして大切な家を失った。「昨日まではあったのに。もうここには住めないなら移住するしかない」と、悲しんだ。