ヤギが好きだ。そう言うと、沖縄ではもれなくヤギ汁が好きだと思われそうだが、その魅力は食すことだけにとどまらない。何を隠そう、私はつい最近までヤギを食べずに生きてきた。それでも見ては癒やされ、おじさんたちのヤギ談義に飛び入り、楽しい時間を過ごしてきた。沖縄の人たちは、食べる食べないにかかわらず、きっとヤギが好きなのかも。

ボーダーインク・1944円

 本書はそんなヤギの魅力と活用術をこれでもかと網羅した1冊だ。ヤギの基礎知識に始まり、農家や料理店、さらには癒やしのスポットまで紹介されている。取材範囲は県内全域。著者の並々ならぬヤギ愛を感じる。

 基礎知識といっても難しい専門書とは一線を画し、「沖縄で多くのヤギが飼われているわけ」や「沖縄のヤギ、なぜ白い」など、写真付きでわかりやすい。読了後にはかなりの豆知識がつくので、次のヤギ談義が楽しみになること間違いなし。

 数年前、ヤギ肉と血圧との関係を覆した研究結果が公表されて以降、ヤギ肉の需要が一気に高まり、供給が追いつかなくなっている。供給を増やそうといってもそこは生き物。一朝一夕にはいかないのが現実で、農家の苦労が目に浮かぶ。本書では、リーダー的存在の農家や団体の飼い方や哲学にも触れている。生産者の視点に立つと、目の前の一杯(ヤギ汁のことです)にどれだけの手間暇がかけられているかがわかり、おいしさとありがたさが増す。農家の方々のいい表情も必見だ。

 ヤギが食べられないという人にもおすすめしたい。本書ではヤギの癒やし効果にも注目。公園での飼育やヒージャーオーラセーといった娯楽のほか、東日本大震災の被災地でアニマルセラピーに一役買った事例など、ヤギの利用価値を多面的に紹介している。

 ヤギの魅力にはまったところで、最終章に料理店が掲載されている。定番メニューや名物オーナーなど、「ヒージャージョーグー(ヤギ上戸)」の著者ならではの情報。行かない選択肢はないように思われるこの構成に脱帽する。(榮門琴音・沖縄タイムス記者)

 【ひらかわ・むねたか】 1945年生まれ。獣医師・調理師。69年、琉球政府厚生局入庁、動物愛護センター所長などを経て2006年に定年退職。著書に「沖縄でなぜヤギが愛されるのか」「復活のアグー」など

ヒージャー天国―食べる・飼う・いやされる 沖縄のヤギ文化誌
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