米軍関係者による事件事故の被害者は、二重に犠牲と苦痛を強いられている。1度目は事件事故そのものによって。2度目は損害賠償請求を巡って。

 公務外の事件事故の場合、米政府が補償する仕組みになっているが、被害者やその家族が「迅速」で「十分」な補償を受けるのは難しい。

 日米両政府は1996年、日米特別行動委員会(SACO)の最終報告で、損害賠償の手続きを巡る地位協定の運用見直しに合意した。

 運用改善措置として打ち出されたのが「SACO見舞金」である。米政府による支払い額が裁判所の確定判決による額に満たない場合、日本政府がその差額を見舞金として支給するという仕組みだ。

 だが、現行制度には依然としてさまざまな不備がある。

そのことをあらためて浮き彫りにするケースが最近、立て続けに表面化した。

 2008年1月、沖縄市で起きた米海兵隊員の男2人によるタクシー強盗致傷事件。

家族は沖縄防衛局を通じて米軍側に損害賠償を求め続けてきたが、米軍側からは何の回答もなかった。 

 昨年、ようやく慰謝料を支払う旨の示談書が示された。中身を見て驚いたという。慰謝料は約145万円。加害者を永久に免責するとの条件までついていた。家族は損害賠償請求訴訟を起こした。

 那覇地裁沖縄支部は5日、請求をほぼ認め、米兵2人に遅延損害金を含む計約2640万円の支払を命じた。

 SACO合意に基づく手続きがようやく動き出す。

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 事件発生から今年で10年。被害者救済の視点を忘れた、あまりにも悠長な対応というほかない。

 裁判所の確定判決額と米側の示した補償額の間には毎度、大きな開きがある。それなのに政府はこれまで、遅延損害金は支給の対象にしない、との方針をとってきた。

 被害者の補償を受ける権利を明文化し、日米が法的義務として損害を賠償する仕組みを導入すべきである。

 昨年4月、うるま市で起きた女性暴行殺害事件で、米政府は当初、被害者側から地位協定に基づく補償金の請求があった場合、支払わない考えであることを日本政府に伝えていた。

 地位協定は補償対象を「合衆国軍隊の構成員または被用者」と定めている。被用者とは米軍に直接雇用されている者のことで、加害者は軍属ではあるが被用者ではないので補償の対象外、というのが米側の言い分だ。

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 軍属として地位協定に基づく優遇措置は受けながら、被用者ではないので補償はしない-遺族感情を逆なでするような理不尽な話である。

 結局、裁判で示された賠償額を日米双方が分担することに合意した。近く遺族に支払われるという。ただし、米軍の支払いは地位協定に基づく補償金ではなく「特例的な見舞金」で、日米の負担割合も明らかにされていない。

 「迅速」で「十分」な補償を実現するためには、運用改善ではなく、地位協定の改定が必要だ。