自動車工場などで働く派遣労働者の過酷な実態や格差社会を描いた小説「ガラパゴス」(相馬英雄著)。大企業の都合や不正などが背景に絡むストーリーが現代の問題と重なって胸をえぐる

▼自動車メーカーなど大手製造業の不正問題が明らかになるたびに思い出す。今回もそう。日産自動車が排ガス測定値や燃費データを改ざんしたという新たな不正を公表した

▼昨年、無資格者の従業員による完成車の不正検査が発覚したばかり。今回は国内六つの工場のうち5カ所で不正が行われており、会社全体の体質と言わざるを得ない

▼なぜ不正は続くのか。他社に同様の不正検査があったことをきっかけに把握したというが、無資格者検査問題が発覚した後も見過ごされていたことになる。認識の甘さにがくぜんとする

▼新たな不正の要因を幹部は「書き換えても法に抵触しないと検査員が思ったのでは」「再検査で走行距離がかさむことへの不安もあったのでは」などと釈明した。安全を脅かす推測でしかない。無資格者検査問題では、コスト削減や規模拡大による現場の疲弊感なども指摘された

▼労働の実態、生産現場の管理態勢、法令順守はどうなっているのか。消費者は信頼と安全に投資する。ものづくりの根幹を揺るがす不正を絶つ構図と経緯を洗い出さなければ、信頼は取り戻せない。(赤嶺由紀子)