毎月第3水曜日は、今月施行された県手話言語条例に基づく「手話推進の日」だ。

 最初の手話推進の日にあたるきょう、県はホームページで「おはよう」や「こんにちは」など簡単な手話表現の紹介を始める。込み入った話はできなくても、相手の顔を見て、あいさつを交わせば、互いの距離は縮む。

 条例をきっかけに、手話への理解を深め、使用しやすい環境づくりを図りたい。

 都道府県レベルでは6番目となる県の手話言語条例は、前文で「(手話は)独自の語彙(ごい)及び文法体系を有し、ろう者とろう者以外の者が、意思疎通を行うために必要な言語」とうたう。

 関係者が「大きな前進」と喜ぶのは、手話を音声言語の日本語と同じ言語と定めた点だ。

 日本のろう教育は長い間、相手の口の動きを読み、発声訓練を行う「口話法」が中心だった。健常者に近づくことを優先したため、手話を「手まね」と軽んじ、禁じてきた歴史がある。

 聴覚障がい者の間で大切に受け継がれ、発展してきた意思疎通手段にもかかわらず、使用を禁止するのはアイデンティティーの否定にもつながる。

 その流れを変えたのは、2006年、国連で採択された障害者権利条約だ。手話を言語と位置付ける条約で、国内でも11年に改正された障害者基本法に同様の内容が盛り込まれた。

 県条例理解の第一歩は、少数者の文化をはぐくむ手話の重要性に気づくことである。

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 条例の柱は、手話の普及に関する施策の推進や手話通訳者の養成で、県の責務を明記している。もう一つの柱、学校での取り組みでは、聴覚障がい児が手話を学ぶ機会の保障と、教員の手話技術の向上を求める。

 具体的な施策は、県手話施策推進協議会の審議を経て、年度内に策定される手話推進計画に盛り込まれる。

 現在、県に登録している手話通訳者は64人と少なく、イベントや会議に派遣する絶対数が不足している状況だ。健常者と障がい者をつなぐ手話通訳者の養成は、差し迫った課題である。

 条例が可決された県議会本会議で、議場に手話通訳者が配置されたことがニュースとなった。しかし通訳がついたのは提案理由説明の場面だけ。傍聴希望を受け通訳者を積極的に配置するなど議会のバリアフリー化も急ぎ取り組まなければならない課題だ。

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 地方自治体で先行する条例づくりとは別に、国主導で手話を普及させる法整備の必要性も叫ばれている。

 「日本手話言語法」の制定を求める意見書は、この春までに、全国の1700を超える全ての地方議会で採択された。

 特別支援学校で必須教科として手話に取り組むなど、教育分野の環境整備で国の果たす役割は大きい。

 より住民に近い地方議会の意見書に表れた民意の重さを受け止めれば、その動きを後押しする手話言語法の制定は待ったなしである。