育鵬社版教科書の採択拡大を目指す日本教育再生機構(東京)に、全国の保守系市町村長らでつくる教育再生首長会議が事務局を委託し、2014~17年度に計約1220万円を支払っていたことが分かった。

 首長会議には中山義隆石垣市長と下地敏彦宮古島市長が名前を連ね、九州・沖縄で首長が加盟する自治体は全て公費を支出していることも判明した。

 本紙の情報公開請求や取材で明らかになった。

 事務局委託金として首長会議は、年間340万~400万円を支払っている。首長会議の年間収入の約7割に当たり、再生機構のスタッフの人件費などに充てられている。首長会議の資金が事務局委託金名目で再生機構に流れているのである。

 再生機構は育鵬社版教科書の全国採択を宣言しており、06年に発足した。役員には育鵬社版教科書の執筆・編集関係者が含まれ、深い関わりがある。理事長は安倍晋三首相の政策ブレーンの大学教授が務めている。

 一方、首長会議は14年に発足し、会員は131人。規約には「適正かつ公正な教科書採択に関する調査・研究」が明記されている。

 再生機構に事務局を委託していることを考えれば、両者は事実上一体であると見るのが自然である。

 特定の目的を持った団体に市町村長らが公費を支出するのが妥当なのかどうか、疑問である。

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 石垣市を含む3市町でつくっていた八重山採択地区協議会が中学生の公民教科書を育鵬社版に決めたことを巡り、竹富町が反発、紛糾したことは記憶に新しい。

 最終的に竹富町教育委員会を八重山採択地区から分離し、町単独の採択地区に変更。石垣市と与那国町は育鵬社版、竹富町は別の教科書を採択することで決着した。

 首長会議に、石垣市は設立当時の14年度からこれまで計13万9千円、宮古島市も16年度から計6万5千円を公費で支出している。

 中山市長は首長会議から再生機構に委託金が支払われていることに問題はないとの考えだ。

 中山市長、下地市長とも再生機構と育鵬社との密接な関係の認識がなかったという。再生機構は育鵬社版教科書の採択拡大を公言しており、両者の関係を知らないというのは軽率のそしりを免れない。

 公費の支出に問題がないというのならば両市長とも市民に説明する責任がある。

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 教科書採択にあたっては選定のプロセスを含め、公平性と透明性が求められるのはいうまでもない。

 特定教科書の採択拡大を活動の主目的にしている団体に、結果的に公金を支出しているのは、こうした観点からも逸脱しているのではないか。

 教育委員会制度が変えられ、首長が教科書採択にも影響力を行使しかねない状況になっている。各議会でも「市民目線」で積極的に取り上げ、公金支出の妥当性について議論してほしい。